クレアシンガポール事務所では、2020年11月から12月にかけて、ABCクッキングスタジオ(以下「ABC社」という。)と連携して、日本の地方の食材の魅力を伝える料理教室をタイ(バンコク)とシンガポールで開催しました。初開催となるタイには日本の2つの自治体から、シンガポールには4つの自治体・団体から自慢の食材をご提案いただき、タイで69名、シンガポールで99名が参加しました。
本事業では、自治体がPRしたい食材を提供し、ABC社がその食材を活かすレシピを考案して、現地消費者向けに料理教室を行います。
消費者に調理・試食を通して地方の食材の魅力を実感してもらうことで、食材の購入やSNS等での情報拡散に繋げ、自治体の販路拡大を支援することを目的としています。また、食材が提供された地方の観光情報を参加者に提供することで、自治体の魅力が多面的に伝わることも期待しています。
料理教室は、政府の新型コロナウイルス感染拡大予防のための規制に従い、1回あたりタイで4人、シンガポールで2人のレッスンを複数の日程で継続的に実施しました。PR食材については、タイでは全て現地に商流があるものを使用した一方、シンガポールでは、一部の食材はまだ現地に商流がないものを日本から本事業のために輸入して使用しました。
レッスン期間中には、インフルエンサー及び地元メディアを招待し、レッスンの様子・PR食材等について広く発信する機会を設けました。
また、各レッスン会場では、モニターでの自治体PR動画の上映や、自治体のグッズ・観光パンフレットの配付など、物産だけでなく観光も含めた地方の魅力発信を行ったほか、自治体が事前に用意した質問事項について参加者にアンケートを行いました。
(1)タイのレッスン
実施期間 | 2020年11月9日~29日(土日含む計14日間) |
会場 | ABC Cooking Central World Studio/Central Eastville Studio(2会場) |
実施回数 | Central World Studio:10回 Central Eastville Studio:10回 計20回 |
参加者 | Central World Studio:35名 Central Eastville Studio:34名 計69名(招待のインフルエンサー含む) |
参加自治体 | 福井県、鹿児島県鹿屋市 |
〇メニュー・PR食材
ざるそばとつけ汁 | 福井県:越前五割そば |
さつまいものコロッケ ~雲丹ひしおソース添え~ |
福井県:雲丹ひしお 鹿屋市:紅はるか(さつまいも) |
さつまいものキャラメリゼ | 鹿屋市:紅はるか(さつまいも) |
(2)シンガポールのレッスン
実施期間 | 2020年11月19日~12月7日(平日の計13日間) |
会場 | ABC Cooking Takashimaya Studio/Funan Studio(2会場) |
実施回数 | Takashimaya Studio:25回 Funan Studio:12回 計37回 |
参加者 | Takashimaya Studio:76名 Funan Studio:23名 計99名(招待のインフルエンサー含む) |
参加自治体 | 島根県、三重県、佐賀県嬉野市、(一社)秋田犬ツーリズム |
〇メニュー・PR食材
牡蠣の土手鍋 | 三重県:浦村産冷凍牡蠣 嬉野市:福頭(里芋の親芋) 秋田犬ツーリズム:きりたんぽ |
野菜の揚げびたし | 嬉野市:パプリカ、トレビス 秋田犬ツーリズム:秋田県産枝豆(むき身、ペースト、フリーズドライパウダー) |
フルーツのごま白和え | 島根県:西条柿 秋田犬ツーリズム:紅あかり(りんご) |
温かい緑茶 | 嬉野市:うれしの茶 |
(1)タイのレッスン
ABC社によると、参加者は主に20~40歳代のタイ人女性で、特に40歳代が40%を占めました。
実際にレッスンを体験した参加者からは、「美味しかったので自分でもまた作りたい」、「このようなレッスンにもっと参加したい」など前向きな意見をいただきました。
参加者アンケートによると、越前そばについては、10割の人が「今回食べたコシのあるざるそばが好き」と回答し、麺類全般でも「冷たい麺が好き」という人が約6割に上りました。雲丹ひしおについては、86%の人が好みの味であると答え、タイ料理の炒飯やスープ、サラダにも合うと思うとの声がありました。
紅はるかについては、スーパーで見たことがあると答えた人は、23%と少数派だったものの、「レッスン後に買って自分でも調理したい」と回答した人は6割を超え、「他の国のさつまいもより美味しかった」、「普段使いの食材として買いたい」との声もありました。また、上記3つのPR食材のうち特にどの食材を購入したいか、との質問に回答した人の割合は、33%ずつに分かれ、いずれの食材も高評価を得ていたようでした。
なお、ドン・ドン・ドンキやマックスバリュー、フジスーパー、高島屋などの日系スーパーを利用していると回答した人が多く、参加者は、普段から日本の食材に一定の親しみを感じているようでした。
(2)シンガポールのレッスン
ABC社によると、参加者は主に30~40歳代のシンガポール人女性で、40歳代が37%、30歳代が33%を占め、以下は50歳代が10%、20歳代と60歳以上が9%と続きました。9割以上が日本を旅行した経験があり、5回以上訪問している人も5割以上と回答しており、参加者の日本や日本食材に対する関心の高さが伺えました。
実際にレッスンを体験した参加者からは、「美味しかったのですぐに購入して自宅でまた作りたい」、「シンガポールで売っていない食材もすぐに販売開始して欲しい」など前向きな意見をいただきました。
参加者アンケートによると、牡蠣の土手鍋については、特に牡蠣の人気が高く、9割の人が購入希望と回答しました。野菜の揚げびたしについては、6割以上の人がむき身の枝豆とパプリカを、フルーツのごま白和えについては、7割以上の人が紅あかりと西条柿をそれぞれ購入希望と答え、温かい緑茶(うれしの茶)についても8割以上の人が購入希望と答えました。
また、三重県の牡蠣は、身の大きさと甘みの強い味が特に評価が高く、シンガポールで牡蠣を購入したことがある人のうち、4割の人が三重県産と認識して牡蠣を購入している、と回答しました。嬉野市の福頭は、若干好みが分かれたものの、6割以上が食感と味が好みと答え、パプリカは色が美しいとの評価が高く9割以上が好みと答えました。秋田の食材では、特にむき身の枝豆と紅あかりは色味と甘みで高評価でした。島根県の西条柿については、7割以上がまた購入したいと答え、約8割の人が、現地のドン・ドン・ドンキで販売されている店頭小売価格(3個でS$6.9、5個でS$9.9)は手頃で妥当であると回答しました。
日本食材の購入場所としては、ドン・ドン・ドンキや伊勢丹、明治屋などの日系スーパーが特に多いものの、コールドストレージやフェアプライスといった現地スーパーで購入すると回答した人も多く、普段の食卓に日本食材がある程度浸透していると感じました。
レッスンを担当した講師によると、タイとシンガポールのレッスンに共通して、レッスン終了後に最も参加者から聞かれたのは、「食材をどこで購入できるのか」という質問だったそうです。本事業で調理・試食した経験が、参加者の使用食材に対する関心を高め、購入を促す動機付けになったと考えられます。また、インフルエンサーはもちろん、一般参加者の中にも、レッスン時にSNSに投稿する人が少なくなかったそうです。参加者自身が情報発信したことで、使用食材や食材の産地の魅力を参加者以外の一般消費者にも広く伝えることができたのではないかと考えています。
クレアシンガポール事務所では、引き続き、東南アジアをはじめとする所管国において、日本の地方の魅力を伝えるべく、様々な方法で取り組んでまいります。