シンガポールの住宅は大別して、(1)HDB(住宅開発庁)住宅、(2)コンドミニアム、(3)土地付1戸建て、(4)サービスアパートメントの4つに分けられます。我々のような外国人駐在員は専らコンドミニアムに間借りしているのに対して、シンガポール国民はHDB住宅に約8割が入居しています。
1959年に英連邦の一自治州となった当時のシンガポールは、生活環境の悪さやインフラ整備の欠如といった多くの問題を抱え、その中でも住宅不足は深刻でした。州政府は早急な住宅建設を進めるため、1960年に住宅開発庁(HDB: Housing & Development Board)を設立しました。設立当初、HDBが建設した住宅(HDB住宅)の入居率は1割に満たなかったものの、現在では約8割のシンガ ポール国民が入居しており、そのうち約9割は住宅を所有しています。
シンガポール政府は、所得や入居形態、購入物件の部屋数などに応じた助成金を交付し、住宅を購入することが困難な低所得者には低価格でHDB住宅を提供する制度を設け、国民のHDB住宅購入を促進する「持ち家政策」を実施しています。国民がHDB住宅を購入する場合、強制的な積立制度である中央積立基金 (CPF)により、収入の一定額を毎月積み立てて、住宅購入資金としています。
・HDB住宅:S$284,000(約2,120万円)
・エグゼクティブ・コンドミニアム: S$698,000~862,000(約5,210万円~約6,430万円)
シンガポールでは都市計画に基づいてHDB住宅の建設が行われており、居住区域には学校や商業施設、公園、交通機関が計画的に配置・建設され、暮らしや すい住環境づくりが進められています。共有スペースなどでは、イベントを開催し住民間の交流も促進しています。また、多民族国家であるシンガポールのコミュニティ形成の取り組みとして、入居者の比率が、一定の地域ごとに国民全体の民族比率と同程度になるよう配慮されています。
(シンガポール事務所所長補佐 松田)