今月のメールマガジンでは、赴任した後に知ることになった、シンガポールの意外な一面について二つご紹介します。
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「ピピ~!貴様、ゴミを捨てたな。罰金500シンガポール$※(約4万円)を課する!」「俺には自分の荷物の他には何も見えねーけど。ゴミってどれか教えてもらえませんかね!」
漫画“ジョジョの奇妙な冒険”第三部で主人公の仲間ポルナレフがシンガポールに到着した際に警察官と繰り広げる冒頭のシーンを覚えている方もいるかも知れません。多くの日本人にとって、ゴミのポイ捨てが罰則化されているシンガポールは“ゴミ一つない綺麗な国”という印象があるのではないでしょうか。
しか~し、実態はかなり異なります!
ペットボトルや空き缶が転がっている光景をよく目にしますし、特に目立つのはタバコの吸い殻です。シンガポールではタバコひと箱が1,000円以上するのですが、喫煙者はそこかしこにおり、歩きタバコも禁止されていないせいか、至る所にタバコの吸い殻が落ちています。今年1月にやっと、東京で例えると銀座にあたるオーチャード地区に禁煙エリアができたのでこれから改善していくかも知れませんが、屋外禁煙に関しては他の先進国の方が一歩先を行っている印象を持っています。
※2019年現在、初犯は最高1,000シンガポールドルの罰金
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「は~、今日もたくさん人が並んでる・・・」
クレアシンガポール事務所の最寄り駅、ラッフルズプレイスの地下鉄駅出口は今日も大混雑。
東京で例えると大手町のような金融街であることから、利用者はそもそも多いのですが、数台あるエスカレーターのうち一つは、私が赴任した4月から10月頭までずっとメンテナンス中で使えません。加えてエスカレーター待ちの行列に横から割り込む人が続々と現れるため、長蛇の列ができているのです。
長期間メンテナンス期間を取るからといって性能が良いかというとそうではなく、止まっているエスカレーターを階段のように歩く光景は日常茶飯事で、先日は一大観光地のセントーサ島の動く歩道も止まっていました。
修理やメンテナンスの結果が良くないことは全てに通じており、一部の信号機の押しボタンは連打しなければ点灯しませんし、シンガポール赴任者にとって借家の修理・メンテナンスが1回で終わらないことは常識となっています。ちなみに私はエアコンの修理だけで4回の訪問を受けることになりました。全ての修理来訪回数を合計すると10回を超えます。
旅行でしか訪問したことがない私が単純に比較できませんが、多かれ少なかれ他の先進国でも不具合には遭遇します(シンガポールは特に不具合が多いように感じますが)。逆に日本の「いつも正常に機械が動いている」状況こそが、世界的に見ると特別なことなのかも知れません。
私は“職人気質”という日本の文化が、不具合の少なさに関わっているのではないかと考えています。日本人の職人の方の多くは、後で不具合が生じることを恥だと思い、求められる以上の施工・修理・メンテナンスを行う傾向がありますが、シンガポールでは修理したその時点で直っていれば、1週間後に壊れても問題無いと考えている事業者の方が多いように感じます。
一方で、この職人気質という文化は、日本の労働生産性の低さに通じているのではないでしょうか。労働生産性はGDP÷(就業者数×労働時間)で計算しますが、例えば丁寧に時間をかけて1回だけ修理する場合と、すぐ壊れる修理を短時間で4回する場合を比較すると、後者はGDPが4倍(1回の修理代を同じ金額と仮定)になり、労働時間も少なくなるため、理論上労働生産性は大きく向上することになります。
しかし私は、日本の職人気質は“信用”につながることから、今後日本企業がシンガポールで戦う上で最大の武器にもなると思っています。現在シンガポールでは職場内のシンガポール人比率を高めるため、外国人へのビザ発給を厳しく制限していますが、シンガポールでは日本以上に急激に少子化・高齢化が進んでいることから、いずれまた外国人に対するビザが緩和されるチャンスがやってくる可能性が高いと言われています。その時はぜひ多くの日本企業に修理メンテナンス部門に進出いただき、我が家のメンテナンスを頼みたいです!
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シンガポール事務所 所長補佐 今井