現在、日本では少子高齢化・労働力不足が深刻化する中で、各自治体においても、ベトナム政府と人材確保に関する覚書を締結するなど、外国人材確保に向けた動きが加速しています。
1993年に制度化された外国人技能実習制度については、徐々に実習生が増加し、2018年には33万人程度の実習生が日本で技能を習得していますが、今回は、インドで技能実習生の送出し・教育を行っている「AKAL JAPANESE ACADEMY」を訪問し、同社の取組みやインド人材の日本への送出しの現状等をお伺いしました。
1 インドにおける送出しの現状
2017年10月に日本とインドの間で技能実習に関する協力覚書が締結され、2018年7月には、技能実習生の第1期生が初めて訪日しました。現在では、インド国内で約30の送出機関が認定されており、2019年6月時点でインドからの実習生が100名以上来日していますが、ベトナムやフィリピン、インドネシア等の主要な送出し国と比べると、その数がまだまだ少ない状況です。
2 AKAL JAPANESE ACADEMYについて
同社は、2018年にインド政府により認可された送出機関であり、ニューデリーとアルナーチャルプラデーシュ州(ミャンマー、中国、ブータンと接する州)の2か所で日本語学校を運営していています。
生徒数は100名ほどで、その大半は技能実習生として日本への渡航を希望しており、技能実習生の要件となっている日本語能力試験のN4の取得に加え、日本文化や生活習慣の学習を行っています。産業訓練校や看護学校を卒業してから入校する生徒が多く、すでに専門性を身に着けているため、実習生として来日後に早く仕事に適応できるとのことでした。
同社では、これまでに2名の技能実習生を日本に送り出しています。他にも10名がすでに日本企業との面接に受かり、今後は、農業、建築、ビルクリーニング等の分野で実習を受けるようです。
3 日本側の人材確保に関するニーズ
日本の企業から問い合わせを受ける中で、最近では特に看護・介護人材のニーズの高まりを感じており、これまでは同分野での送出しの実績はないものの、今後は看護学校と提携し、送出しに向けた準備を行っているとのことでした。
また、日本企業がインド人材を求める理由として、インド人材の優秀さを評価しているケースが多く、企業の中には、当初はベトナム等から受入を行っていたものの、優秀な人材が少なくなってきたと考え、インドにシフトしたケースもあるようです。
しかしながら、まだまだインド人の技能実習生の受け入れ先の確保に課題があるため、今後も企業への営業に力を入れたいと話されていました。
4 今後に向けて
日本では少子高齢化を伴う人口減少による人材不足を背景として、特定技能制度が今年度から始まっており、日本の労働市場においては、これまで以上に外国人材が人材不足の解消に寄与することが見込まれています。
一方で、技能実習制度は、日本で培われた技能等の開発途上国への移転を図り、当該国の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的としていますが、今後も同制度の活用拡大が見込まれ、インドをはじめ、幅広い国からの送出しが増えていくものと思われます。