街歩きをしていると、手話を使う人々の姿を時々見かけることがあります。公用語が4つ(英語・中国語・マレー語・タミル語)もあるシンガポールでは、 どのような手話が使われているのでしょうか。
まず歴史から紐解いてみたいと思います。 シンガポールに手話教育がもたらされたのは、1951年のこと。一人の男性が手話教育のため、中国から来星しました。1954年にろう者のための学校が設立され、その時使われていたのは上海の手話だったそうです。
ところが1965年、シンガポールの独立に伴う教育政策により、国が英語教育に重点を置いたことから、手話の世界も影響を受け英語の手話が取り入れられるようになりました。もちろん以前から、ローカルで使われていた手話もありましたので、上海手話 (SSL)、英語手話(ASL)、英語対応手話(SEE-II)、そしてローカルの手話 が合わさった「シンガポール手話」に発展してきました。
現在、シンガポールには公式に認められた手話はありませんが、このシンガポ ール手話がシンガポールのろう者の間で認知されています。 今、シンガポールでは手話通訳者の育成に力をいれています。手話通訳者に関する法律や認定制度は存在しないものの、シンガポールろう協会には数名の通訳者がいるそうです。また公式の通訳者の養成講座は設けられていない一方、シンガポールろう協会では現在3つのコースが用意され手話を勉強することができます。最近手話通訳者の出番が多くなったため、認知度も上がってきているとのこと。
多くの政府機関がろう者の参加する会議で手話通訳者を雇用したり、首相の施 政方針演説(ナショナルデーラリースピーチ)や予算説明スピーチでも手話通 訳を付けたり、積極的になってきています。 公式ではないものの、公的に使われるようになっているシンガポール手話。これからもシンガポールにおける手話の発展に注目していきたいと思います。
(シンガポール事務所所長補佐 堀部)