2021年10月27日、クレアシンガポール事務所は、日本国総務省及びインドネシア国家行政院(NIPA)と共同で、インドネシアの自治体職員向けに「日本インドネシア知識交流セミナー 2021」を開催しました。2015年に、日本国総務省とインドネシア国家行政院が「アジア地方行政セミナー」を共催して以来、今回のセミナーで6回目の開催となりました。2020年以来、新型コロナウイルスの感染拡大により、両国を実際に訪問して行う事業の実施は難しい状況であるため、今回は初のオンライン開催となりました。
テーマ選定に際しては、インドネシア側と十分に時間を割いて検討を重ね、日本とインドネシアのみならず世界各国に共通し、かつ喫緊の課題である「コロナ禍における経済再生の取組」について、両国の知見を共有したいという点で合意に至りました。特にインドネシアでは、今春以降、全域で感染が拡大した結果、地域経済に大きな傷痕を残しており、テーマ選定時には、「日本側の先進的な取組と知見を取り入れたい」という要望をいただきました。
今回のセミナーでは、インドネシア側の要望に応えるため、総務省の協力の下、講演団体の選定を進めた結果、静岡県西伊豆町と島根県から自治体職員2名を講師として招へいしました。静岡県西伊豆町から「西伊豆町電子地域通貨(サンセットコイン事業)」、島根県から「“魅力的な人に会う” オンラインツアーの効果」と題して、コロナ禍で深刻な影響を受けた我が国の地域経済と観光分野の再生に向けて、地方自治体が果たすべき役割と必要とされる関係機関同士の協力体制について先進的な取組をご講演いただきました。また、インドネシア経済調整省及び西ジャワ州からも講師を招へいし、コロナ禍における経済活性化戦略の取組について、中央政府及び地方自治体のそれぞれの立場から、直近の感染状況に関する詳細なデータを交えてご講演いただきました。両講師からは、今後も感染拡大防止及び国内産業の回復に向けた取組を着実に進めていく、との説明がなされました。
セミナー当日は、インドネシアの自治体職員等を中心に約450名が参加し、実際の経験に基づき語られる各講師の話を非常に熱心に聞いていました。各講師の講演後に設けた15分間の質疑応答時間では、時間不足になるほど数多くの質問が寄せられ、同国の地方自治体においてもアフターコロナ・ウィズコロナ時代の経済再生への取組が喫緊の課題であることが窺えました。
日本側への質疑応答で印象的だったのは、「電子地域通貨やオンラインツアーといった新しい取組をスタートする際には強制力やインセンティブを用いたのか」という類の質問が多く寄せられた点です。この点に関して、両講師から「地域の業者を一軒ずつ説得して回った」「インセンティブはないが、県内市町と連携して浸透を図った」という回答があり、強制力やインセンティブに過度に頼ることなく、とりあえず身の回りから開始し、徐々に拡大していくという日本的な手法が功を奏したという点に、モデレーターやパネリストを始め、多くの参加者が感銘を受けた様子でした。国民性や文化・風習の違いがあるため、両国の自治体に求められる役割は異なっている点もあるかと思いますが、地域住民が地域経済の担い手である点は両国で共通していることをセミナー参加者が共有できたものと感じました。
世界的に大きな傷痕を残しているコロナ禍において、切実な課題を共有し、課題解決に向けて意見の交換が出来た今回のセミナーは、日本とインドネシアの自治体間の距離を縮め、今後の継続した情報・意見交換を行う上での強固な基盤づくりに貢献したものと思います。