(1)シンガポールにおける生ごみのリサイクル状況
シンガポールの生ごみは2019年の約74万トンから2020年は約66万トンへと11%減少し、2017年から過去3年にわたって減少しています。また、生ごみのリサイクル率は、10年前(2011年)の10%から年々上昇し、2020年は19%と約2倍となりました(※1)。
シンガポールでは生ごみのリサイクル状況が改善しているように見受けられますが、その背景と生ごみ削減に関して政府や民間企業の取組がどのように行われているかご紹介します。
(2)ごみ削減の背景とZero Waste Masterplan
政府は気候変動に対応するため、また、国土が非常に限られているシンガポールにおける唯一のごみ埋立地であるセマカウ島をより長く使用するため、2030年までに、埋立地に送られる廃棄物の量を30%減らすことを目標に掲げたZero Waste Masterplanを打ち出しました(※2)。
(3)生ごみ削減に関する政府の取組
取組の一例として、2019年に制定された法律「Resource Sustainability Act」があります。この法律では、2021年以降、開発事業者が大量の生ごみを発生させる商業施設等を設計する際に、生ごみ処理用の空間を設けるようにしなければならないとしています。また、2024年以降は大量の生ごみを発生させる企業等は、廃棄物処理のために生ごみを分別しなければならない(※3)としています。
また、政府は2020年5月7日に176万シンガポールドル(約1億3千万円:2020年5月7日時点のレート)のFood Waste Fundを立ち上げました。当該基金は、生ごみ処理システム等のインフラ改善に1件あたり最大10万シンガポールドル(約750万円:2020年5月7日時点のレート)の支援金を支給できます(2021年2月末で申請受付終了)(※4)。
(4)民間企業の生ごみ削減技術の開発
シンガポールの民間企業も生ごみ対策に向けて様々な製品を開発しています。例えばLumitics社は、Insightというスマートごみ箱を開発しました。Insightにはカメラが設置されており、ごみ箱に捨てられた生ごみの写真を人工知能が分析し、廃棄物の量や廃棄されやすい食品等の傾向をフィードバックすることで、利用者の効率的な生ゴミ削減を支援します(※5)。
このように、シンガポールでは生ごみ削減に向けた政府の政策や支援、企業努力による技術革新の相乗効果で、Zero Waste Masterplanによる目標の達成を目指しています。
シンガポール事務所所長補佐 大澤 知澄
出典
※1
https://www.nea.gov.sg/our-services/waste-management/3r-programmes-and-resources/food-waste-management#:~:text=Food
※2
https://www.towardszerowaste.gov.sg/zero-waste-masterplan/
※3
https://www.towardszerowaste.gov.sg/files/zero-waste-masterplan.pdf (40頁を参照)
※4
https://www.nea.gov.sg/media/news/news/index/nea-launches-new-fund-to-cover-cost-of-implementing-food-waste-treatment-solutions-for-organisations
※5
https://www.webintravel.com/lumitics-continues-relentless-push-to-cut-food-waste-in-travel/