日本と同様、ここシンガポールでも高齢化の進展が社会的な課題となっています。2016年の総人口に対する65歳以上人口の割合(高齢化率)は、12.4%で、今後15年以内に24%まで上昇すると見込まれています。日本の高齢化率が12%から24%に達するまでに22年を要したことと比較すると、シンガポールの高齢化のスピードがいかに深刻であるか理解できます。現在、1人の高齢者を支える労働者の割合が4.7人である状況に対し、2030年には2.3人まで半減することが見込まれており、若者への負担増が懸念されています。
それに加え、シンガポール国立大学Yong Loo LinメディカルスクールのMerchant助教授が実施した調査によると、シンガポールの西部ブキッパンジャン地区に暮らす1,051人の高齢者のうち、3分の1以上が筋力・活動の低下状態に向かいつつあるか、その状態に陥る直前であることがわかりました。このような状態になると、独立して日常生活を営むのが困難になります。(筋力・活動の低下状態とは、記憶力の低下、身体的・精神的な活動の低下等を指します。)
そこで、同スクールは、高齢者の身体機能低下を防止し、QOL(Quality of Life)を向上させることを目的として、名古屋市にある国立長寿医療研究センターが開発した高齢者向けのプログラムをシンガポール人向けにアレンジした新しいプログラム「Healthy Ageing Promotion Programme for You (HAPPY)」を発表しました。
プログラムでは、参加者は体と頭の両方を同時に使う必要があります。例えば、体のパーツを示すアルファベットを記憶した後、足踏みしながらアルファベットとマッチする体のパーツを動かします。また、プログラムを主導するのは同じ高齢者のボランティアです。今後、このプログラムは2年間にわたり実施され、1,000人以上の高齢者が参加する予定です。
シンガポールをはじめやタイなども高齢化問題に直面していきますが、その際日本の自治体の先行的な取り組みがモデルケースとなるでしょう。
(シンガポール事務所所長補佐 杉田)