2017年11月27日(月)~12月1日(金)までの5日間、インドのジャルガオン市に兵庫県から上下水道の専門家を派遣し、「自治体国際協力専門家派遣事業」を実施しました。
ジャルガオン市はマハラシュトラ州の北部に位置している、人口約46万人の地方都市です。上水道に関しては、浄水の水質は良好で直接飲用もできます。しかし管理面でまだ課題が多いように見受けられました。たとえば、配管がブロックごとにネットワーク化されていないため、配管途中で補修工事などが発生した場合、当該箇所以降は断水してしまいます。また、浄水の需要量96,000㎥/日に対して浄水場能力は132,000㎥/日ありますが、実際は漏水率が約50%あり供給が十分にできていないそうです。なお給水は3日間ごとに1時間のみ行われ、各戸で貯水タンクに汲み置きしているため衛生面でも課題があります。下水道についてはいまだ未整備の状態で市内の河川や水路の水質汚濁が著しく、早急な整備が望まれています。現在、ジャルガオン市は下水管路図などの基本的な計画を作っていますが、実際の運用はもう少し先になりそうです。
今回の専門家派遣は5日間のプログラムとして行われました。
現地視察・実地指導と、ジャルガオン市事業局の技術職員に対する講義および 意見交換を織り交ぜる構成で実施しました。
まず現地視察・実地指導については、以下の施設を視察しました。
(1)上水道の水源池(ダム)、導水ポンプ場
(2)浄水場、配水池
(3)下水処理場建設予定地、放流先河川、市内の側溝・水路
これらの施設を視察する中で、水源ダムの貯水容量が給水量ベースで2年分あることや、浄水の水質が直接飲用できる水準である点などについては、非常に優れていると専門家から評価がありました。
一方で、導水ポンプ場では故障したポンプやバルブが場内に放置され「使い捨て」の状態になっていたり、発生汚泥や砂ろ過洗浄廃水などを近隣の水路に直接放流しているため、二次汚染の原因となっている点などが課題として指摘がありました。専門家からは、上下水道に関わらず社会基盤インフラは建設して終わりではなく、適切に維持管理してこそ本来の機能を発揮するものであり、たとえばポンプなども使い捨てにするのではなく、恒常的に維持管理を行う「予防保全」の考え方が重要であるとの指摘がありました。今回の指導対象は技術者の方々でした が、現場を監督する職員として、専門家の言葉に熱心に耳を傾けていました。
講義では、現場視察で共有した「予防保全」の考え方や具体的な点検内容のほか、上下水道施設の建設工事で留意すべき失敗例や建設技術等について、専門家から指導を行いました。
現場視察を行う中で、生活排水などが近隣水路に直接放流されていることなどから、住宅地の側溝や付近の水路が著しく汚染されている状態を目の当たりにしました。日本では高度成長期において産業の発展の一方で環境汚染が進み、大気や水環境が著しく悪化していましたが、ジャルガオン市は当時の日本と同じような状況ではないかと見受けられました。日本は厳しい水質規制や下水道整備を行ってきた結果、現在の水環境を獲得することができたので、今回の専門家派遣を受け、ジャルガオン市も現状の改善に取り組んでいくことが期待されます。
また、今回の専門家派遣をきっかけとして、両自治体の交流が深まることを願っています。
クレアシンガポール所管国内における自治体国際協力専門家派遣事業では、2017年度はインドのみならず、マレーシア、インドネシアに市場管理、農業の専門家も派遣しています。
当事業は国際貢献だけではなく、自治体のPRにもなり、また自治体間の新たな交流や既存の交流の強化につながります。日本の自治体の皆様におかれましては、ぜひ当事業をご活用ください。
自治体国際協力専門家派遣の詳細についてはこちら↓
http://www.clair.or.jp/j/cooperation/special/index.html
(川﨑所長補佐 鹿児島県いちき串木野市派遣)