シンガポールは世界でも有数の大都市ですが、北緯1度のほぼ赤道直下に位置し、いたるところに緑があり、少し郊外に足を延ばせば熱帯雨林の自然が広がっています。そのため、日本では考えもつかないような、思わぬ野生の動物に出くわすことがあります。
先日も、シンガポールで唯一の世界遺産であるボタニックガーデンに行った際、ガサガサと音がするので振り返ってみると、体長1mを超えるオオトカゲが遊歩道を横切っていました。
これほど大きなトカゲは日本では見たことがないので、あわててカメラを向けましたが、躊躇して近づけませんでした。オオトカゲは逃げることもなく茂みの中からこちらを見ていましたが、周りの観光客はちらっと横目に見るだけで、あまり興味を示すことなく通り過ぎていきました。
シンガポールでは、オオトカゲを見ることはそんなに珍しくないようで、見慣れている人にとっては日常の風景なのかもしれません。
以前には、市街地コースで開催されるF1グランプリの練習中にオオトカゲがコースを横切り、ドライバーを慌てさせたこともあったようです。
都市化や開発が進むと、生息している動物にとっては環境が大きく変わるため、いろいろな問題が生じる場合があります。日本でも、田畑を荒らすイノシシなどの問題に頭を悩ませている自治体も多いのではないでしょうか。
シンガポールでは、高速道路により自然保護区が分断されている地域があり、動物が車にひかれるなどの問題が生じています。そこで、動物が自由に移動し、生息域を広げることができるよう自然保護区をつなぐ陸橋を高速道路上に建設し、この問題を解決しようと試みています。ジャコウネコ、リス、絶滅のおそれのある野生生物に指定されているセンザンコウ、さらには高速道路を横断するほどの飛行能力のない小鳥などが橋を渡っている様子が確認されており、この試みはある程度の成果を上げているようです。
また、タイでも都市化が進んだことにより、生息地を失ったオオトカゲが、自然が残る公園内に住み着き繁殖しすぎたため、捕獲し別の施設へ移すことで個体数の調節を行っているようです。
シンガポールのオオトカゲの場合は、幸いにも絶滅が危惧されているわけではなく、逆に増えすぎて困るということもなく、またおとなしい性格のため、人間に危害を加えるといったこともないようで、今のところは大都会でも人間との共存ができているようです。ぜひ、このままうまく共存していき、我々のような観光客や外国人を驚かせてほしいものです。
(シンガポール事務所所長補佐 藤田)