もうすぐ敬老の日。日本では少子高齢化による人口減少への対応が大きな社会的課題になっていますが、ここ、シンガポールも少子高齢化の波が確実に押し寄せています。しかし、同じように経済発展をしている2つの国ですが、高齢者を支える政策や意識には違いが見えてきます。
(1)シンガポールの高齢者福祉政策
日本は高齢期を年金、医療保険や介護保険など様々な福祉政策で支えています。 一方で、シンガポールの福祉の考え方は「自助(individual responsibility)」、「地域互助(community support)」、「政府による間接援助(Government subsidies help to keep basic healthcare affordable)」の3つの原則とされており、高齢者自身も、まずは自分のことは自分で支えるという自助を基本としています。その自助が困難な人は地域の福祉ボランティアによって支援し、さらにそれも難しい場合には政府がボランティア団体等に財政的な援助をすることで間接的に援助をすることとなっています。
そのため、日本のような賦課方式の年金制度ではなく、中央積立基金(CPF) に自分たちで積み立てる方式が採られています。また医療費も基本的にこの中央積立基金(CPF)から支払っています。
(2)子供は親を支えるもの?
このように、自助の精神が強いシンガポールですが、多くの高齢者は家族のサポートのもとに暮らしています。1995年には「両親扶養法(Maintenance of Parents Act)」という法律が制定されており、生計を立てることが困難な両親を子供が扶養することが義務づけられています。 実は、中央積立基金(CPF)は年金や医療費としての役割だけでなく、住宅費や教育費としても活用されるため、老後の資金として貯蓄されている額が少ない場合もあり、子供のサポートがないと生活が難しいという一面もあるようで す。
したがって、シンガポールは金銭面でも生活面でも子供や家族のサポートが欠かせないものとなっています。
(3)日本とシンガポール、違いと共通点
長年社会を支えてきた高齢者を支援するという根本的な考えはどちらも変わりませんが、日本は高齢者を家族だけでなく社会全体で支える考え方であるのに対して、シンガポールはより一層家族が支えるものととらえている点に違いが見えてきます。
敬老の日をきっかけに身近な高齢者を大切にする気持ちを見直したいものです。
(シンガポール事務所所長補佐 中澤)