2016年7月、新潟県上越市副市長を団長とする訪問団がシンガポール及びタイを歴訪し、①市内産品の海外販路開拓、②観光インバウンドの推進、③港湾視察・企業訪問の3班に分かれて、各々の分野における視察や交流会を開催しました。当事務所は港湾視察・企業訪問班に関する関係機関へのアポイント調整及び同行支援を行いました。
1 PSA Corporation Ltd
世界最大級のコンテナ貨物取扱量を有し、ASEAN地域随一の物流ハブであるシンガポール港について、世界最先端の港湾物流サービスや港湾振興施策を研究し、直江津港における定期コンテナ船誘致の取組に活かすことを目的として、PSA Corporation Ltdの視察を実施しました。
PSA 社は1997年以降、シンガポール港湾の運営を担っている政府系の港湾運営会社です。シンガポール港湾庁が法的な制度を担当する一方で、PSA社は港湾運営に特化していることが特徴です。
シンガポール港における貨物トラック入場ゲートはオートメーション化されており、事前に運転手の指紋やナンバーを登録することで1台につき25秒、毎時700台を処理しています。また、AGV(Automated guided vehicle)と表記される自動運転エリアを有するとともに、コンテナ内の温度はWeb上で管理することができるなど、最先端の技術を導入しています。
今後はタンジョンパガーなど古い港湾から順次シンガポール西部のトゥアス地区へ移転していく予定で、新港湾はフルオートメーション化された次世代ポートとなります。
2 DHLアジア太平洋イノベーションセンター
東南アジアの物流における顧客ニーズの変化やその対応のための最先端のサービスを確認し、直江津港利用に関する物流サービスの利便性向上に活かすことを目的として、DHLアジア太平洋イノベーションセンターの視察を実施しました。
同センターは革新的なロジスティクス・ソリューションの開発を促進するため、2015年12月、アジア太平洋地区で初めて開設された施設です。同センターは自動運転車、ロボット技術、モノのインターネット(IoT)、拡張現実(AR)を活用し、未来のロジスティクス・サプライチェーン・ソリューション開発の最前線に挑んでいます。
5~10年後の物流業界でのトレンドの中で、ハイ・インパクトな技術革新として3Dプリンタが挙げられています。3Dプリンタは物流を根底から変える可能性があり、「モノを運ぶ」から「設計図を送って現地で作る」ことが可能となります。さらに、タブレット端末を通して図面を見ると完成品が立体的に浮き上がって見える拡張現実(AR)の技術は、修理作業に応用することが可能です。
アジア全体では2030年までの予測として、Eコマースの伸びが著しい中国、インド、ベトナムがキートレーダーになると見られています。東南アジアでは、インフラ不足、事務手続きの煩雑さ、法律の不備などが物流の課題として挙げられていますが、TPPにより改善されることが期待されています。そのイニシアチブをとる国家はTPP加盟国であり、陸路の開発も進んでいるマレーシアとベトナムになると予想されています。
3 東南アジア交流事業・富寿し新潟県上越市フェア
新潟県上越市に本社を置く創業60年以上を誇る「富寿し」のシンガポールでの新潟県上越市フェア開催に合わせたイベントとして、現地バイヤーや関係者を集めた交流会が開催されました。上越市副市長によるトップセールスに続き、上越市の日本酒の試飲、海産物等地元産品を用いた郷土料理の試食提供によるPR等が行われました。
上越市はコシヒカリに代表される米どころであり、冬の豪雪を源とする清流を利用した日本酒が有名ですが、同時に海産物にも恵まれており、特にマグロは参加者の関心を一身に集めていました。