3月21日(火) ~ 24日(金)の日程で岡山市議会がシンガポール、マレーシア両国における政治・経済等の最近の行政情勢について調査を行いました。クレアシンガポール事務所は岡山市議会からの依頼により、「シンガポール教育省」、「シンガポール国立教育研究所」、マレーシアの「イスカンダル開発地域」への視察に同行しました。
シンガポールでは教育省が国の教育行政全般を管理・管轄しており、同省における教育政策の理念・目標は以下のとおりとされております。
①子どもたちにバランスのとれた十分な教育の機会を提供し子どもたちの可能性を引き出していくこと
②国内経済を支えられるような未来を担う子どもたちを育てること
ただし、シンガポールではこれまで学歴をめぐる熾烈な競争が展開されてきたこともあり、近年は子どもたちの個性や能力、多様性を尊重し、生徒の自律的学習をより奨励するような動きもあるようです。
同省への視察中に訪問団が特に関心を示したことの1つに、シンガポールのプレスクール(日本の幼稚園、保育園といった未就学児を対象とした教育・保育機関)に関する取り組みが挙げられます。厚生労働省の発表によると、岡山市は全国の自治体の中で待機児童数がワースト2位となっており、待機児童については岡山市が抱える行政の課題の1つです。
他方、シンガポールでは、子どもをプレスクールに通わせる意向さえあれば、ほぼすべての子どもを最低でも1年間はプレスクールに通わせることができるようです。背景には、シンガポール人が起業家精神に富んでいるためか、「お金になる」ようであれば各地域の需要に応じてプライベートスクールを中心にすぐにプレスクールができるとMOEの担当者から説明があり、シンガポールのこうした実情に訪問団から驚きの声があがっていました。
シンガポール国立教育研究所はシンガポール唯一の教員養成機関です。同施設の主な役割は、教員になるための人材を育成することに加え、教員として活躍している人材のさらなる能力開発を実施することです。
NIEではシンガポール政府が推し進めているICT教育(Information and Communication Technology)を導入していることから、訪問団はNIEにおけるICT訓練の内容や手法や説明してもらいました。また、NIEではオンラインを活用した指導やディスカッションも実施しており、訪問団は東京のシステム開発者とオンラインを通じて実際に交流する場面もありました。オンラインを使った授業は東北地方と南海トラフの地域にある学校間で防災に関する意見交換が既に行われているなど、日本の教育現場でも取り入れられているため、岡山市でもこうした技術を取り入れられるかどうか検討したいと訪問団は語っていました。
イスカンダル開発計画はシンガポールに近接したマレーシア・ジョホール州において進められている総合型の開発計画で、電子・電気や石油化学など既存の産業だけでなく、医療や教育など新たな産業を育成して雇用を創出し、それに併せて居住区や観光資源の整備などを行っています。
イスカンダル地域内はA~Eの5つの地区に分けられ、それぞれ分野に特化した開発が行われています。
A ジョホールバル都市部
国際貿易、金融センター、サービスセンター(コーズウェイでシンガポールと連結)
B ヌサジャヤ地区
海外大学の誘致、テーマパークなどのエンターテイメント・医療観光などのサービス産業、州政府機能
C タンジュン・ペラパス港周辺区
物流拠点、自由貿易区域、石油備蓄港(セカンドリンクでシンガポールと連結)
D パシル・グダン港周辺区
電気・化学・油脂化学製品の製造業、石油化学備蓄港
E セナイ空港周辺区
物流拠点、ハイテク産業・宇宙関連産業、商業施設、サイバーシティ
今回訪問団は、イスカンダル開発公社からイスカンダル開発地域の概要のブリーフィングを受けるとともに、開発が進む各区域を視察しました。
この他、訪問団はクレアシンガポール事務所でアポイント取得を行ったクアラルンプール農業省やイスラム振興局、イスラムツーリズムセンター、サイバージャヤなどを視察しました。
クレアシンガポール事務所では自治体の海外視察等への協力や視察先で得られた最新の情報を提供していますので、今後もクレア発信の情報にご注目ください。