12月3日(木)~4日(日)にかけて、タイを訪問しタイ国王崩御後のタイの経済状況及び市場調査を実施しましたので、報告します。
バンコクの中心地スクンビット通り沿線には、多くのショッピングモールが立ち並んでいます。今回の調査では、スクンビット沿線の10の商業施設を巡りました。
スクンビット通りを中心に南北に延びる路地(ソイ)には、西から順番に番号が付けられており、北側が奇数番号、南側が偶数番号となっています。この通りには、商業施設が立ち並ぶだけでなく、特定の外国人が集中する地域があり、例えばソイ33/1は「日本人駐在員主婦の町」、さらにソイ39周辺は「日本人のベッドタウン」と言われています。
日本人駐在員の多く住むエリアの代表的な大型商業施設としてエンポリアム、エムクォーティエがあります。スクンビット通りを挟んで対面して建設された商業施設は、どちらもタイ百貨店大手ザ・モール・グループが運営しています。エムクォーティエとエンポリアムを比較すると、エムクォーティエには若者向けのブランドが多く出店しており、若者や母娘が多く来店していました。どちらも高級ブランドが出店しており、富裕層向けの高級感漂う落ち着いた雰囲気があります。
ザ・モール・グループは、このエリアにエンポリアム、エムクォーティエに続いて新たな、商業施設の建設を計画しており、2017年着工を目指しています。スクンビット通りには、別の大手百貨店のセントラルグループが、セントラルエンバシーをセントラルチットロンに隣接して建設するなど、コンセプトの異なる同一グループの商業施設を近隣に複数建設することによって、集団の力で個々の集客力を上げる戦略がタイ大手百貨店のトレンドとなっています。
このエリアに住む日本人駐在員にとって、欠かせないのが日系スーパーマーケットのUFM Super Fujiです。タイに駐在する日本人には、その名の通り「フジスーパー」の愛称で呼ばれています。タイ最古参の日系スーパーで日本食品を豊富に揃えており、平日の夕方や土日は日本人客だけでなく、タイ人も多く見かけます。
現地日系サプライヤーによると、UFM Super Fujiでは、日常使いの割と低価格帯の商品(1個20THB(約65円)の日本産りんご)が多く売れており、逆にエンポリアム、エムクォーティエでは、贈答品等に利用される高級日本産果物等が売れているそうです。
日本人居住エリアから西側に目を向けると観光客向けの大型商業施設が立ち並んでいます。その中でも圧倒的な集客力を誇るのがサイアムパラゴンです。“The Pride of Bangkok”をコンセプトに、超高級ブランドを惜しみなく出店させているかと思えば、水族館を施設内に作ったり、ファストファッションのお店を充実させたりと老若男女、様々なお客様を魅了しており、まさにバンコクのランドマークとなっています。サイアムパラゴンの顧客の7割が海外からの観光客ということで、豊富な品揃えを誇る食料品売り場には、多くの外国人観光客を見かけました。
サイアムパラゴンの周辺には、セントラルグループの運営するセントラルワールド、伊勢丹等があり、各商業施設が各々の特色を打ち出し、商業施設の熾烈な競争が繰り広げられています。
これまで駐在員や海外観光客に人気の高級ショッピングモールを紹介してきましたが、スクンビット通りには、タイ人でごった返す商業施設も多々あります。BIG C SupercenterやMBK Centerなどです。特にBIG C Supercenterは、家族連れのタイ人が大量に箱買いする姿を多く見かけました。タイ人向けの商業施設の食料品売り場を見てみると、残念ながら日本からの輸入品の取り扱いはほとんどありませんでした。6個で70THB(約230円)のりんごが売られている中で、1個200THB(約650円)の日本産高級りんごには、いくら質が良く美味しいからといって、なかなか手が出ないのが現状です。日本産食品が、日本の2倍から3倍の価格で売られている中で、タイの中間層にとって日本産食品はまだまだ手の届かない存在と言えます。
タイでは、近年、クレアシンガポール事務所の他にも多くの自治体が日本産フェアを実施しています。多くの商業施設がしのぎを削る中で、どこで日本産フェアを実施するかによって売上に大きな差が出てきます。売りたい商品の価格とターゲットの絞り込みをしっかり行うこと、そしてターゲットの消費需要を現地でしっかり調査することにより、より効果的な日本産フェアの実施が期待されます。
また、今回の市場調査は、タイ国王崩御後のタイ国内の経済への影響を調査することも目的の一つでした。10月13日にプミポン前国王が逝去され1ヶ月半が経ち、タイ国内は徐々にではありますが以前の活気を取り戻しつつあります。逝去直後は黒一色だった看板も今では半数が元に戻っていますし、装飾も商業施設によって多少の差はありますが、鮮やかなクリスマス装飾が店内を照らしている施設もありました。
一方で、国民の消費動向は、民間企業の動きとは少し異なるようです。現地の日系サプライヤーは回復にはもう少し時間がかかるのではと話し、正月から崩御後100日にあたる来年の2017年1月下旬以降にかけて徐々に回復するのではないかと予想しています。
我々がバンコクに到着した2016年12月1日は、ワチラロンコン新国王が即位した記念すべき日でもありました。しかし、バンコク都内は盛大なお祝いムードには至らず、国民に深く愛された前国王の死を悼む国民心情を垣間見た日となりました。
新国王誕生や新憲法公布を控えた今後のタイの動向に、クレアシンガポール事務所も注視していきます。