自治体国際化協会は、自治体の海外販路開拓支援事業として、2010年度に上海、2011、2012年度は香港において全国の自治体を通じて商品を集めた「日本ふるさと名産食品展」を開催しました。いずれも現地の消費者、会場となった百貨店、出展企業から好評を得ました。今年度は、東南アジアの中でも日本食品の市場として注目を集めるタイ・バンコクにおいて同展を開催しました。
タイは、日本産の農林水産物・食品の主要な輸出先の一つであり、首都バンコクでは日本食レストランが1,200軒を超えると言われるほど日本食が浸透しています。かねてより親日的な国柄でしたが、2013年7月の査証免除以降日本人気がさらに高まり、「日本ブーム」が継続しています。
東南アジアで「日本ふるさと名産食品展」を初開催するにあたり、開催地を自治体からの注目度の高いタイ・バンコクとすることは早くから決まっていましたが、開催会場の選定に時間を要しました。現地の日本食品を取り扱うディストリビューターや、過去にバンコクで食品展を実施した自治体等からの情報収集・実地調査を重ね、集客力、主な顧客の層、立地条件等から最適と思われた「サイアム・パラゴン」を選定しました。食品展中は、週末を中心に多くの買い物客で賑わい、出展企業の満足度も概ね高かったです。
タイに食品を輸入する際には、商品別にタイ食品医薬品局(FDA)から「食品登録番号」を取得し、輸入販売許可を受ける必要があります。番号取得までには、書類・サンプル提出後2ヶ月~3ヶ月程度かかると言われています。FDAへの申請にあたっては、原産地証明書、所管の保健所が発行する食品製造業許可証(英文)、成分表示表(英文)、製造工程表(英文)が必要です。商品によっては追加書類の提出や多数のサンプルを要求されることもあります。申請に長期間かかることが考えられる商品(酒類、精肉、柑橘類、缶コーヒー、アイスクリーム)は予め募集対象外としました。
自治体を通じて出展企業を募集したところ、18自治体から28社の応募がありましたが、営業許可証の取得が困難であった日本茶関連の企業など10社が辞退し、18社(13自治体)が出展することとなりました。
開催前から百貨店の担当者や現地のディストリビューターから日本の果物、菓子は人気があると聞いていましたが、やはりそれらの人気が印象的でした。特に柿は大変好まれ、初日だけで1000個以上も売り上げました。健康志向を反映し、果物や果実を使用した菓子も非常に好評でした。味つけは甘酸っぱいものが好まれるようです。一方であんこの甘さは苦手な人が多い印象でした。
味噌・しょうゆは当初、既にタイにある商品との差別化が難しく販売が困難だろうと言われていましたが、会場である「サイアム・パラゴン」の顧客(富裕層が多い)は、既に日本へ旅行したことがある人も多く、味噌やしょうゆの味の違いが理解されるようでした。有機栽培の大豆を使用していること、良質な水を使用していることなど商品の特徴を説明すると、高額の商品でも購入していく人が見られました。特に、小さい子供のいる家族連れなどは、試食して子供が気に入ると数個まとめて購入していきました。
うどん、ラーメンなど麺類も人気で、「食感が気に入った」「手軽に調理できるのが良い」と購入する人が多く、最終日を前に売り切れとなりました。
「サイアム・パラゴン」は、「The Pride of Bangkok(バンコクの誇り)」とのキャッチフレーズのもと高級感を大切にする百貨店です。今回の食品展中も、商品のディスプレイ方法、販売スタッフの態度などに対してきめ細かな指導が入りました。中でも果物のディスプレイには非常に気を配っており、たくさんの果物を高く盛り、葉などを美しく飾るよう指示がありました。
愛知みなみ農協の「アイコトマト」はハート型の容器に入れて販売されていましたが、赤いトマトとハートの容器が非常に可愛らしく人気がありました。ピンク色のパッケージの商品に目を留める人が多いのでタイ人のスタッフに尋ねたところ、タイ人はピンク色を好むとのことでした。
「日本ふるさと名産食品展」は過去二回香港で開催し、今回バンコクで開催しましたが、それぞれの特徴が明らかになりました。香港では試食して気に入るとまとめ買い(果物一箱など)をしたり、食品展開催中何度も戻ってきたりする人が多いのですが、バンコクでは多くて2~3個のみを購入する人が大半でした。また、バンコクでは一個あたり500バーツ(約1500円)を超える商品は販売が非常に困難でしたが、香港ではある程度の高額商品であっても味が気に入れば購入に結びつくことが多くありました。
バンコクにおける初の「日本ふるさと名産食品展」は、当初の目標に近い売り上げを達成することができました。「サイアム・パラゴン」で全国から商品を集めた食品展は初の試みであったため、「サイアム・パラゴン」を擁する「The Mall Group」の幹部から非常に喜ばれ、来年以降の開催も要望されました。自治体の共同組織であるクレアの強みが評価されたものと思われます。
開催に至るまでの交渉、輸出準備、会場運営等、初の開催ならではの苦労や改善すべき点も多々ありましたが、今後より良い海外販路開拓支援を提供するために役立てていきたいと考えております。
開催期間 | 2013年11月8日(金)~11月17日(日) 10:00~22:00 |
開催場所 | タイ・バンコク都 Siam Paragon(サイアム・パラゴン) Gourmet Market |
主催 | 一般財団法人自治体国際化協会 |
対象者 | 一般消費者 |
出展者 | 18事業者(13地方自治体) |
出展内容 | ■農水産物 柿・梨・りんご・トマト・長芋・塩蔵わかめ・鰹のたたき■加工品 菓子類(せんべい・クッキー・ケーキ・カステラ・饅頭・おやき・アメ)、麺類(そば・ラーメン・うどん・パスタ)、味噌・しょうゆ・冷凍カレールウ・信州サーモン・ドレッシング・佃煮 |
販売総額 | 約660万円 |
(新山所長補佐 東京都大田区派遣)