クレアシンガポール事務所の職員が、2018(平成30)年2月1日(木)と2日(金)にラオス南部にあるパクセー市を訪問し、工業団地を開発中の経済特区について情報収集を行いましたので、その概要を報告します。
パクセー・ジャパン日系中小企業専用経済特区の概要
パクセーはラオス南部に位置する人口約10万人の都市です。パクセーの隣町である「パクソン」には肥沃な土地に恵まれた「ボラベン高原」があり、農業に関連した幅広い経済活動を行うため、以前から進出している日本の企業もあります。
2013年、パクセーより約330kmほど北にあるサワンナケートに東西経済回廊が開通したことや、パクセーとダナンを結ぶ国道16号線の開通、パクセーからカンボジアに車で約1時間半で到達できる陸路の整備などが影響し、近年日本の企業からますます注目されてきています。
ラオス人は一般的に、子どもの時から農作業や手作業に慣れているため手先が器用であるということ、また人件費が比較的低い水準であることなどから、細かな作業を行う工程をタイからラオスへ移す企業が増えており、パクセーも例に漏れず、磁性部品メーカーやウィッグメーカーが進出しています。これらの日系企業が進出しているエリアのすぐそば、パクセー市内から車で20分ほどのメコン川沿いに、パクセー・ジャパン日系中小企業専用経済特区(以下、経済特区)の開発が進められています。
こちらはかねてよりラオスで事業を行っていた㈱西松建設(以下、西松建設)が出資者となり、開発を一手に引き受けて開発を行っています。この経済特区開発はラオス政府が日本製品の品質や安全性をラオスに取り入れたいという願いから西松建設に要望があったものであり、以下のとおり企業誘致の上での様々なメリットが提示されています。
【メリット】
・安い人件費 ・税金上の恩典(経済特区のみ適用) ⇒法人税が利潤発生年度より最長10年間免税、輸出入関税の免除 ・安い電力量 ・ワンストップサービスサポート(日本語、英語対応可) ・日系企業専用の工業団地 ⇒連絡会議の開催等による情報交換の機会(特に給与の支給について他とバランスが取れる) |
興味深いのが、名前のとおり「日系」の「中小企業」のみが誘致対象となっています。これまでメコン地域の日系専用経済特区では大企業と中小企業が混在していたため、賃金格差や従業員の引き抜きなどが起こり、「日系」と銘打った経済特区であるにも関わらず企業間で競争が発生してしまったことの反省を踏まえ、中小企業に対象を限定しているとのことです。
全体の開発面積は195haで、現在は第1期開発エリアとして約66haが開発されています。2018年5月には延べ床面積3,024㎡(1区画432㎡×7区画)のレンタル工場が完成予定です。
また、ラオス政府からは、経済発展への貢献だけでなく、地域環境保全についても先導していくことが期待されています。たとえば、パクセーではまだ下水道が整っていませんが、経済特区内では下水処理のシステムが構築されています。
さらに、労働者の確保について、パクセーに進出している9社の話によると、Facebookで求人を行った場合、翌日には50人ほどの希望者が集まり、労働力に困ったことは一切ないということでした。
現在、開発段階ではありますが、今後日本の企業が続々と進出し、経済特区が「日本村」に成長していくことが期待されます。特区として、現状はタイプラスワンの国であるが、タイから「パクセーブランドが良い、買いたい!」と思ってもらえるような展開になるよう、誘致戦略上仕掛けていきたいとのことです。
ASEAN地域との経済交流が活発な昨今、自治体において、中小企業の海外進出サポートは大きなミッションの一つであるといえます。今回はメコン地域でも今まさにチャンスにあふれるパクセーについて紹介させていただきました。
パクセーについてご興味・ご関心がある自治体は、いつでもクレアシンガポール事務所にお問い合わせください。
なお、下記URLより、経済特区の概要をご確認いただけます。