シンガポールの2018年度予算案が2月19日に発表されました。会計年度は日本と 同じ4月から翌年3月までの1年となっており、2018年度の歳入予算は約727億 シンガポールドル(約5兆8,000億円)、歳出予算は約800億シンガポールドル (約6兆4,000億円)でともに年々増加しています。
2018年度予算には、「Together, A Better Future」(ともに、より良い未来へ)という親しみやすいキャッチフレーズがつけられました。予算の策定にあたって は、メールやFacebookなどを通じて広く国民から予算に対する意見を聞く場が設けられました。また、ウェブページには財務大臣による予算演説の動画やイラス ト入りの説明を掲載するなど、国民が理解しやすいように工夫がされています。
1 シンガポールが直面する変化と4つの目標
予算はシンガポールが目指す未来を知る上で非常に重要です。政府は、予算を国の未来を位置づける戦略的で総括的な計画であるとして、シンガポールが現在直面している3つの変化:(1)世界経済の重心はアジアへ、(2)仕事や生活を変える新しい技術の創出、(3)高齢化社会、について言及しています。その上 で、これらの変化は挑戦と同時にチャンスをもたらすとして、2018年度予算の戦略をもって達成すべき次の4つの目標を掲げました。
(1) 活気のある革新的な経済
(2) スマートで緑の豊かな都市
(3) 思いやりがある団結した社会
(4) 持続可能で安全な未来
2 歳出にみるシンガポールの姿
歳出を部門別に見ると、国防にかかる歳出が最も大きな割合を占めています。テ ロリズムやサイバー攻撃の脅威が高まっているとして、国の防衛力を強化するた めの費用としています。また、長年にわたり2位であった教育分野を押さえ、交 通分野にかかる歳出額が2位となっています。これは、国際的な拠点としての空港の新ターミナル建設やマレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道の敷設、現在国内を走る地下鉄道路線の延線などの費用が増加すると見込まれているためです。
3 税制改正にみるシンガポールの未来
税制については、以前から議論されていた消費税に相当する商品サービス税(GST)を、2021年から2025年の間に現在の7%から9%に引き上げられることが発表され ました。この税率の改正は、今後増大する医療費や教育費に充てるため、経済の 状況を見極めながら実施されることとなっています。また、法人税の減免やスタートアップ企業に対する優遇政策を策定し、外国企業 を呼び込むための戦略が立てられています。一方で、炭素税の導入など環境に配 慮した国づくりのための改正も行われました。 シンガポールは国の現状と課題を把握し、それに対応するための方針をしっかりと定めています。目指す未来へのビジョンを持った予算が、発展を続けるシンガ ポールを支えていると言えるでしょう。
(シンガポール事務所 所長補佐 川俣)