EROPA(Eastern Regional Organization for Public Administration)とは、アジア・太平洋地域の経済及び社会の発展に資するため、各国の行政の質の向上を図ることを目的として、1960年(昭和35年)12月に設立された国際組織です。
在、10か国が国家会員として加盟しており、このうち、日本は、1960年(昭和35年)12月3日に閣議決定を行って加盟した原加盟国です。
会議では、総会(2年に1回)及び執行理事会(原則として1年に1回)が開催されていますが、今年は9月16日(日)から20日(木)までの5日間、インドネシアのバリにおいて第64回執行理事会及び分科会等が開催されました。
EROPAは、国家会員、団体会員及び個人会員から構成されています。事務総局はフィリピンのマニラに置かれ、そのほかに研修センター(インド)、開発経営センター(韓国)、電子政府センター(中国)及び地方行政センター(日本)の4つの専門センターがあります。
「地方行政センター」は自治大学校内に設置されており、同センターの所長は自治大学校長が兼ねています。また、自治大学校は国家会員の日本政府代表となっていることから、EROPAの日本における窓口として活動しています。
クレアは団体会員となっており、昨年実施された2年に1度の団体会員代表選挙で代表に再選任され、この度の執行理事会には団体会員代表として出席しました。クレアは、日本の行政におけるベストプラクティスに関する知識をアジア各国の行政機関と共有することにより、EROPAとその会員の持続的な発展に継続的に貢献することを目指しています。
また、JIAM(全国市町村国際文化研究所)もオブザーバーとしてこの会議に参加しています。
今回の会議では、「変遷する時代に適合した行政の役割 ~人材開発、人材管理・公共サービス・事実に基づく規範、制度構築・公共倫理~」というメインテーマに基づき、分科会やフォーラムが実施され、参加各国の研究者等が発表を行いました。
17日から19日にかけて行われた分科会には、日本からは、縣公一郎氏(早稲田大学・地方行政センター顧問)、高田寛文氏(政策研究大学院大学・地方行政センター顧問)、菊地端夫氏(明治大学)、藤原直樹氏(追手門学院大学)、日野原由未氏(岩手県立大学)及び寺迫剛氏(行政管理研究センター)が参加し、モデレーターを務められたり研究報告を行いました。
その中で藤原氏は「海外展開のための官民パートナーシップ:日本の行政水道事業調査」という演題で、日本の水道技術を地方自治体と民間事業者とが共同で海外へ事業展開している事例を発表し、各国の参加者から多くの質問が寄せられました。
また、19日の会議終盤には、スペシャルセッション「アセアンの行政ネットワーク」が開催され、長年EROPA会議に携わっておられる中邨章氏(明治大学・地方行政センター顧問)がアジアにおける行政組織の進展やアジア地域の行政への関心の理由、アジアの行政研究の見通しと問題点を発表されました。
Q&Aセッションでは、参加者から質問が多く寄せられ、地方行政が抱える各国共通の課題に対する日本の研究や取組に高い関心を持っている様子がうかがえました。
今回、地方行政に関わる一人の職員として、この国際会議に出席し、アジア各国の研究結果やベストプラクティス、分科会での多岐に渡るテーマに触れて、様々な立場から行政の発展に尽力しようとする各国の専門家の方々の熱意を感じました。
また、アジア各国からの参加者が講義に熱心に聞き入る姿に、同じ行政職員として刺激を受けました。
国や文化、言葉の違いはありますが、住民のためにもっと地域をよくしたいという思いは、行政に携わる者として共通であると感じました。その中で、このような国際会議に参加し、各国の様々な実践事例からノウハウを学び、参加者同士で意見交換を行い、またそこでの繋がりを活かして、自国で役立てることが地域の発展につながるのだと思います。私たち日本の行政職員も、アジア各国の関係者と協力しながら、お互いの施策について意見交換等を行い、行政の質を向上させていかなければならないと思います。
国際会議の運営という点では、スタッフの役割や配置、参加者が意見交換を行う場でもあるコーヒーブレイクやランチタイムでの食事の提供方法等、国際会議における受け入れ態勢に対する取組みや工夫を学ぶことができました。その他、発表者のスケジュールが直前まで決定せず、また会期中に一部の参加者の空港までの送迎がキャンセルされるなどの課題もありましたが、それは多くの国の代表を相手にする国際会議を運営する難しさであり、事案に対し柔軟な対応が求められるということを実感し、大変貴重な経験となりました。
今回は世界的なリゾート地で開催されたということで、会場となったホテルのサービスは大変行き届いており、会議の運営にも一役買っていました。また参加者に対しての観光PRという面でも大きな役割を果たしたのではないかと思います。
2019年度のEROPA会議は、「不確実な時代における行政の未来 ~地域の回復力、公平性、持続可能性を再考する~」をメインテーマに、フィリピンのマニラで開催されます。当地には事務総局が置かれており、来年は2年に1度の総会の開催年であることから、今年以上に熱い議論が繰り広げられることが期待されます。