シンガポールの福祉政策は「自助・共助・間接的援助」の3原則に基づいて実施されており、住民に対する行政の直接的な支援は限定されています。 老後の生活や医療は国民の「自助」により行われることが目指され、中央積立基金(CPF)と呼ばれる強制貯蓄制度を軸として、国民の自助を可能にしています。また、何らかの理由により自助が出来ず援助が必要な人たちは、「家族互助」や地域社会を中心とした福祉ボランティア団体による「地域互助」により援助することとしています。
このため、政府は家庭や地域社会の結束(地域で高齢者を支えるネットワークづくり等)を奨励するとともに、ボランティア団体の育成や組織化、公団住宅内への高齢者活動センターの設置等を実施しています。 そして、自助、互助でも救済できない場合には、政府が救済の手を差し伸べます。ただし、この場合においても、政府は困窮者に対し直接資金等の補助を行うことをなるべく避け、ボランティア団体等に対し必要な財源的援助等を行う ことにより、「間接的に困窮者を援助」することが原則とされています。 このような仕組みの中、これまで在留日本人もシンガポールにおいて様々な社会貢献活動を行ってきました。
その中心的なものが、シンガポール日本人会(JAS)が行っているリサイクルバザーです。 JASリサイクルバザーの歴史は1970年代初期にまで遡ります。当時低所得者が多かったジュロン地区に住んでいた日本人主婦が、教会の構内にある知的障害児センターの悲惨な現状を知り、資金調達方法を友人と話し合い、手元にある 古着や中古の雑貨類を収集してジュロンバザーを開いたことがリサイクルバザーの始まりです。こうして始められたリサイクルバザーは、JASの恒例行事として、今や地元社会に溶け込み、現在も年10回開催され、その収益金は社会貢献に役立てられてお り、地域社会からも高く評価されています。
(シンガポール事務所所長補佐 倉田)