クレアシンガポール事務所は、マレーシアのクアラルンプールで開催された、日本政府観光局(JNTO)主催の一般消費者向け旅行フェア「Japan Travel Fair 2019」に参加し、ビジット・ジャパン・カウンターにおいてJNTOクアラルンプール事務所と連携した訪日観光PRを行いました。
JNTOが発表した2018年の訪日外国人客数(推計値)は、前年比8.7%増の3,119万1,900人となり、2017年の2,869万人を上回り、過去最高を記録しました。訪日需要を創造する訪日旅行プロモーションの最新状況をレポートします。
主 催 | 日本政府観光局(JNTO) |
概 要 | マレーシアからの訪日旅行者をさらに増加させるため、クアラルンプール市内のショッピングモールにおいて旅行フェアを開催。
現地旅行会社が訪日旅行商品の販売を行うほか、日本の地方自治体等共同出展者が各地域の観光の魅力・情報を発信。 |
開催期間 | 2019年1月10日(木)~13日(日) 4日間 |
開催場所 | Sunway Velocity Mall Level G Vanity Atrium
富裕層・中間層向けのショッピングモール。 |
対 象 | 一般消費者(B to C) |
入 場 料 | 無料 |
来場者数 | 速報待ち
※旅行商品購入者:約1,300人 |
出展団体数 | 日本側出展団体:16団体(うち自治体関係7団体)
マレーシア側出展団体:旅行会社10社 |
マレーシアの訪日旅行者数は2017年に過去最高となる468,300人(前年比6.5%増)を記録しましたが、この伸び率は、東南アジア諸国でトップのベトナム(26%)に大きく引き離されています。
2018年5月にマハティール政権となり、大型プロジェクトが相次いで凍結され、景気が落ち込み、国民は消費を抑える傾向となっています。訪日旅行は価格が高いため、2、3割安い韓国、中国、ベトナムに流れている状況となっています。
【参考】マレーシアからの訪日旅客数の推移(出典:日本政府観光局(JNTO))
年 次 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
訪日外客数 | 305,447人 | 394,268人 | 439,548人 | 468,300人 |
前年同月比伸率 | +22.4% | +29.0% | +11.4% | +6.5% |
※マレーシアの総人口:約3,200万人(2017年マレーシア統計局)
マレーシアからの訪問先としては、東京~京都・大阪間のいわゆる“ゴールデンルート”が主流となっており、東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオ・ジャパンなどのテーマパークも依然高い人気を誇っています。
旅行目的は、「桜」や「雪」を見たいという希望が大変多く、会場にも各地域における桜の開花時期を掲載した看板が設置されていたものの、ベストシーズンを知らないが故に旅行日程と開花時期が合致していない方が大勢みえました。
また、マレーシアでも企業のインセンティブツアーが増加しており、ブースにも問い合わせが多数ありました。現地旅行会社は、人気の旅行先国は、1位韓国、2位台湾、3位中国、4位日本と言っていました。20人規模のビジネスクラスを利用したインセンティブツアーの需要もあるようです。
(参考)人気の旅行先
順位 | 場所 |
特徴 |
1位 | 大阪 | ユニバーサルスタジオ・ジャパンが人気のほか、日本の居酒屋などの雰囲気を楽しむナイトライフ・アクティビティも人気。 |
2位 | 東京・千葉 | 東京ディズニーリゾートは依然高い人気を誇っており、東京スカイツリーや三鷹の森ジブリ美術館も人気。 |
3位 | 岐阜 | 白川郷が人気。東京や関西、長野県からのアクセスについての問い合わせが多かった。 |
4位 | 北海道 | 雪や食事に魅力を感じており、「北海道」という言葉がブランド化している様子。 |
5位 | 福岡 | 3月からのエアアジアのクアラルンプール~福岡線就航に伴い、福岡を中心に九州方面の問い合わせが増加 |
訪日マレーシア人の旅行スタイルは、8割近くがFIT(海外個人旅行)となっています。一方で団体旅行マーケットの現地旅行社のシェアは、顧客とのコネや付き合いで概ね決まっており、既存の顧客をいかに繋ぎ止めるかが重要のようです。ここでは訪日旅行が「クレームのない、必ず喜んでもらえる商品」として、いわゆる金持ちの客を繋ぎ止めるツールとしてうまく活用されているため、移動に手間取る、満足度の低いホテルを利用するなど、顧客離れにつながる要素を排除することに相当気を配っています。これはインバウンドを進める自治体にも参考となる視点かもしれません。つまり、1週間単位の広域周遊プランを提示するセールスはもはや定番となっていますが、もう一歩踏み込んだ移動手段、移動中の楽しみ方など、訪日客の旅行全体の満足度向上に繋がる視点でPRすることは、今後、差別化を図る上で大きな武器となるかもしれません。
観光地をある程度フォーカスすることも大切です。訪日旅行者は、「海、山、リゾート、食、城、アミューズメント、ショッピング全てあります」という売り方をされるより、「そこにしかない」ものに惹かれています。特にFITの場合は、ツアーと違い目的地が設定されません。価格競争、人気スポットに負けないためには、ローカル目線で観光資源の価値観を高める戦略が効果的です。
空港がない地方も悲観することはありません。マレーシア人の中には、レンタカーに対する抵抗がない方も多く、貴重な滞在時間を飛行機の待ち時間で潰されるより、東京からレンタカーを借りて富士山などに立ち寄り、ドライブを楽しみながら地方を目指す客も多いようです。
「これさえすれば」成功するパターンはなく、常に試行錯誤が求められます。当事務所では、引き続きJNTOと連携しながらマレーシアの訪日旅行に関する最新の動向を収集するとともに、情報発信に努めてまいります。