2019年1月24日(木)から26日(土)までの3日間、マレーシア・クアラルンプールで「マレーシアハラールエキスポ2019(MHE)」が開催されました。
このイベントは、2020年の東京オリンピック・パラリンピック(以下、「東京オリパラ」)におけるイスラム教信者(ムスリム)訪日旅行者及びハラール関連需要の増加を見込み、マレーシアのハラール関連中小事業者と日本の事業者のビジネスマッチングを狙ったもので、展示会と関連セミナーが行われました。
クレアシンガポール事務所はイベントを視察し、取材・意見交換を行いましたので、その概要を報告します。
主催:マレーシア起業家開発省(Ministry of Entrepreneur Development)
期間:2019年1月24日(木)~26日(土)
場所:クアラルンプールコンベンションセンター(KLCC)
内容:展示会・関連セミナー
展示会出展者:
マレーシアに拠点を持つハラール関連中小事業者 約300社
(内訳)食材、金融、飲食料品、物流・サービス、バイオ、化粧品、医薬品関連、セレブリティ商品
ムスリムとは、世界三大宗教の一つであるイスラム教を信仰している人々のことです。
世界人口(推計)は2010年で約16億人、来年2020年には約19億人に到達し、「4人に1人がムスリム」となると言われています。
イスラム教には食事や日々の礼拝等、生活全体に関する様々な規範があります。この規範の解釈や実践方法は宗派や地域、個人によって異なり、統一した基準はありませんが、知っておくべき規範として「ハラール(許された物)」と「ハラーム(許されない物)」があります。
近年関心が高まっている食品分野でみると、代表的な「ハラール」と「ハラーム」には次のようなものがあります。
〇ハラールな食品:野菜、果物、魚、卵、牛乳、イスラム方式でと畜された食肉
〇ハラームな食品:豚、酒
※アルコール成分について、醤油の製造工程で生じる自然発酵アルコール成分や引用目的ではない消毒用アルコール成分はハラールとされている事例があります。
※ハラールな物であっても、ハラームな物に混ざったり触れてしまうとハラームとみなされることがあります。
2018年の訪日旅行者数(推計値)は3,119万人で、過去最高を更新しています。このうち、ムスリムが多いマレーシア(ムスリムの国内人口比率:61%)やインドネシア(同:87%)等の東南アジアからの旅行者も増加しています。
また、2020年に開催される東京オリパラでは、さらに多くのムスリム旅行者が日本を訪れ、競技開催地はもとより、全国各地に足を運ぶと予想されています。
その一方で、ムスリム旅行者の受入環境を見ると、官民を挙げて整備を進めているところではありますが、食事や礼拝場所等で改善点が残っています。今回のセミナー講師によると「ハラール対応の料理を作りたいが、調味料・食材の入手に苦慮している」という声が日本のレストラン事業者からも上がっているそうです。
このような中、経済産業省は2018年11月、マレーシア政府との間で「日マレーシア・ハラール協力に関する覚書」を締結。ハラール専門知識の補助や、日マレーシア間のハラール商品・サービスの貿易・投資の促進等を協力分野として設定しています。
マレーシアは現在、「世界のハラールハブ」を国家戦略に掲げ、ハラールに関する基準・ガイドラインの策定を進めるとともに、ハラール関連工場の集積やハラール関連商品の輸出促進に取り組んでいます。
また、中小事業者の輸出促進にも力を入れており、今回のエキスポはまさにハラール関連中小事業者の輸出促進を狙ったものとなっていました。
展示会出展者からは「過去数回、日本の展示会に参加したことがあるが、その時は商談には至らなかった。ただし、今回は東京オリパラという日本のニーズが期待できるため、これをきっかけに日本への輸出を実現させたい」という声がありました。
今回のイベントを通じて、ハラール産業の中心地であるマレーシアから見ると、日本のハラール分野は発展途上であり、マレーシア事業者の有望な進出先と位置付けられていることが分かりました。
その一方で、「ピンチはチャンス」と言われるように、ハラール分野は日本の事業者にとっても新たなビジネスチャンスであり、「Made in Japanクオリティ」を活かして世界のハラール市場に進出するきっかけにもなると思われます。