自治体国際化協会シンガポール事務所は、フィリピンで開催された「Travel Tour Expo 2019」(以下「TTE 2019」)に参加し、日本政府観光局(JNTO)マニラ事務所と連携してビジット・ジャパン・パビリオン(VJブース)において、訪日観光PRを実施しました。
TTE2019は、年に1度フィリピンの一般消費者向けに開催されるフィリピン最大の旅行博です。フィリピン市場へのPRのため世界各国からブースが出展されていますが、VJブースでは、桜の花で装飾された「SAKURA JAPAN TOWER」を中心に、日本の華やかな春を演出して、来場者の目を楽しませるとともに、訪日旅行に向けてアピールをしました。会場内の様子とフィリピン訪日旅行市場の最新状況をレポートいたします。
概要 | The Philippine Travel Agencies Association が主催する国際旅行博覧会 |
開催期間 | 2019(平成31)年2月8日(金)~10日(日) |
開催場所 | The SMX Convention Center(マニラ市内) |
対象 | 一般消費者 |
入場料 | 100ペソ |
来場者数 | 約14万人(2018年度実績) |
VJブース出展団体数 | 16団体
(うち自治体関係ブース) ・(公社)北海道観光振興機構 ・(一社)東北観光推進機構 ・東京都交通局 ・中部運輸局・岐阜県・愛知県観光協会・中部国際空港・名古屋鉄道 ・関西観光本部 ・鳥取県 ・(一財)沖縄観光コンベンションビューロー |
単独ブース出展自治体 | ・東京都
・函館市 |
フィリピンからの訪日観光客数は、近年では毎年過去最高記録を更新し続けており、2019年1月にJNTOが発表した2018年訪日外客数の年間推計値によると50万人を超えるフィリピン人が日本を訪れています。これは、東南アジアではマレーシアを抜いてタイに次ぐ大きな市場であり、1億を超える人口がいることと、毎年の高い増加率から、市場としての魅力が高まっています。2018年10月にはJNTOマニラ事務所が開設され訪日プロモーションが強化されるとともに、同年12月のマニラ-新千歳線の新規就航等による航空機の利便性が高まったことが訪日需要を底上げしたものと思われます。
フィリピンからの訪日旅客数の推移(出典:JNTOウェブサイト)
年次 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年(推計) |
訪日
旅客数 |
184,204人 | 268,361人 | 347,861人 | 424,121人 | 504,000人 |
前年比
増加率 |
+70.0% | +45.7% | +29.6% | +21.9% | +18.8% |
※フィリピン総人口 100,980,000人(2015年フィリピン国勢調査)
TTE2019では旅行博としては珍しく入場料が必要となりますが、朝9時には開場を待つ人で入口は長蛇の列となり、フィリピン人の旅行に関する関心の高さが感じられました。VJブースは入口の前という恵まれた条件と、「桜」が醸し出す日本のイメージが功を成して多くの来場者で賑わいました。JNTOの調査によると、観光目的にフィリピンから来日する方の半数以上が初めての来日とのことです。そのためか、来場者の多くは、並べられたパンフレットを選ぶことなく順番に次から次へと手に取っていました。また、「初めて日本に行くがお薦めはどこか。」という質問も多く、日本には行くが具体的にどこに行くかについてはまだ決めていないという来場者もいました。もう1点、他のASEAN地域の旅行博との違いを感じた点があります。それは、若い方の来場が多いことです。学生のような年代の方が4人くらいのグループで来場し、パンフレットを持ち帰る姿を多くみかけました。フィリピンは、平均年齢24.2歳と若者が多く、合計特殊出生率も3.0人に近いため、まだまだ「人口ボーナス期」が継続されていくと言われております。経済の発展とともに若い方々の旅行意欲がさらに喚起されることが期待されるため、この点においても魅力的な市場と言えるでしょう。
フィリピンの方はまだあまり日本のことをよく知らないようですが、では、一体どのように情報収集をしているのでしょうか?観光庁の「訪日外国人消費動向調査(平成29年)」によると、「出発前に得た旅行情報源で役に立ったもの(複数回答可)」の調査結果は下表のとおりです。この調査からフィリピンの意外な特徴が見えてきます。全体では大きな割合を占めている「個人のブログ」や「SNS」を抑えてフィリピンで最も多いのは「日本在住の親族・知人からの情報」です。技能実習や留学による来日者のほか、多くの永住者が日本に滞在しており、法務省の調べによると平成29年末のフィリピン人の在留外国人数は260,553人です。最も多い愛知県の35,989人から、最も少ない鳥取県の562人まで、在住者数に大きな差がありますが、47都道府県全てにフィリピンの方が在住しています。フィリピン人の訪日観光に大きな力を発揮しているこれらの在住者を活用することも地方のインバウンド政策の一つと考えられます。
今回日本からの出展は概要に記載のとおりですが、どのブースの担当者も地域の知名度の低さを感じている反面、東京・大阪以外の地域にも関心を示していることから、次の観光地としての手ごたえを感じているようでした。まだ、知られていない日本だからこそ、フィリピンをターゲットとした情報発信の方法を工夫することにより、地方への誘客の可能性が大きく広がることが期待されます。
当事務所では、引き続きASEAN諸国の訪日旅行市場最新情報を収集し、関係機関とも連携しながら地域の魅力を発信していきます。