【シンガポール事務所】シンガポールの詐欺被害防止への取り組み

 シンガポールは2014年11月に「スマートネーション」構想を発表し、これまで
にスマートフォンを通じた個人の銀行間での送金サービスの「PayNow(ペイナウ)」
やクラウド、ICTなどのデジタル技術の中小企業への導入といった複数の取り組
みを進めてきました。また、2023年には、デジタルエコノミー(デジタルテクノ
ロジーに基づいて成り立つ経済)がGDPの17.7%を占め、中小企業の95%以上がデ
ジタル技術を採用するなどデジタル技術を活用した国づくりを推進しています。
 2024年10月にはローレンス・ウォン首相がこの10年間で得た成果を基盤に、新
たなフェーズとして「スマートネーション2.0」を発表しました。この構想では、
技術革新を国民生活の質向上、経済成長、そして社会の結束に結びつけることを
目指し、「信頼」「成長」「コミュニティ」の3つの柱を中心にデジタル技術を
活用しさらなる国の発展を目指しています。
その一方で、こうしたデジタル技術を悪用したサイバー犯罪を含む詐欺事件は2023年
に4万6,500件発生し、被害総額は6億5180万シンガポールドル(約750億円)に上
りました。
 「スマートネーション2.0」のひとつの柱である「信頼」では、国民に対し安
全で信頼できるデジタル環境づくりのために、5Gネットワークの全国展開やデー
タセンターの強化といったデジタル基盤の堅牢化を進めると共に、詐欺やサイバ
ー犯罪への対策にも力を入れると示されています。
 詐欺被害の中にはSMSを利用した被害もあり、2024年7月以降、すべての政府機
関は同一の「gov.sg」の送信者IDからSMSを送信するようになり、政府からの本
物のSMSと詐欺目的のSMSとの見分けをつきやすくしました。また、シンガポール
政府はSMSを送信する事業者に対し送信者IDを登録することを義務付けることに
より、登録を義務付けた最初の3か月でSMSを使った詐欺事件は70%減少しました。
 その他にも政府技術庁(Government Technology Agency) の一部門である
Open Government Productsが、犯罪防止評議会(National Crime Prevention Council)
とシンガポール警察(Singapore Police Force)の協力のもと、既存アプリ
(ScamShield(スキャムシールド))の改良を行いました。それにより、不正な
電話やメッセージをブロックするだけでなく、ウェブサイトのリンクが詐欺に関
連したものか確認する機能や利用者が詐)欺被害を迅速に報告できる機能が提供
されました。こういったオンライン上での安全性を高める取り組みが進められて
います。
                   シンガポール事務所 所長補佐 坂本             

             
<参考文献・引用文献>
・Smart Nation Singapore
 Smart Nation 2.0
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M744442&c=52219&d=a05a
・SINGAPORE POLICE FORCE
 Annual Scams and Cybercrime Brief 2023
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M744443&c=52219&d=a05a
・JETRO「ビジネス短信」(2024年10月7日発)
 スマート国家構想開始から10年、第2段階へ
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M744444&c=52219&d=a05a