シンガポール国内で急速に普及したシェアサイクルですが、街の至る所に自転車が放置されるようになった結果、政府は規制強化に乗り出しました。曲がり角にあるシンガポールのシェアサイクル事情を紹介します。
シンガポールでは2017年1月からシェアサイクルサービスが導入され、その利便性から急速に利用者が増加し、自転車台数は現在約4万台にのぼります。 (シンガポールのシェアサイクルの詳細については、2017年10月に配信した記事をご覧ください( https://www.clair.org.sg/j/mail-magazine/201710-sin-share_cycle/ )。
シェアサイクルはシンガポールに新しい便利な交通手段をもたらしましたが、 同時に放置自転車の問題を生じさせました。駐輪場に駐車することにはなっていたものの、厳しく管理されていたわけではなく、歩道や公園、マンションの駐輪場など至る所に自転車が乗り捨てられる事態となりました。中にはサドルが無い、ハンドルが曲がっている、といった整備不良の自転車が横倒しに放置されていることもあり、美しいシンガポールの景観を損なうだけでなく、歩行者の障害にもなっていました。
シンガポール陸上交通庁(LTA)はこの問題に対処するため、2018年11月からシ ェアサイクルサービスを行うにはライセンスを要するものとし、駐輪に関して 厳格な規制(駐輪スペースの設置、利用終了には駐輪スペース内の QRコード読み取りを必須とするルール化等)を設け、これらの措置を実施可能な事業者にのみライセンスを交付することとしました。また、ユーザーの自転車の使用状況は一元管理され、無差別な駐輪を行った利用者にはS$5(約400円)の罰金が科され、年間3回繰り返したユーザーは全ての自転車シェアリングサービスの利用が1カ月間禁止されることとなりました。今回の規制強化は既に効果を発揮しており、街中の放置自転車数は目に見えて減っています。
景観・交通安全面からは歓迎すべき今回の措置ですが、利用者の立場からは、利用終了の手間が増え利便性の低下は否めません。今後のシンガポールのシェアサイクル事業の行く末が注目されます。
シンガポール事務所 所長補佐 岩田