皆さんはフィリピンのメリエンダ(Merienda)という文化を知っているでしょうか?メリエンダは一日2回、朝と昼、昼と夜の間に挟む間食のことを指します。メリエンダはもともと西洋の文化であり、フィリピンでは、1521年のマゼラン到来に始まるスペインの長きにわたる植民地時代に広まっていったものとされていま す。
メリエンダの定番料理は、「トロン」と呼ばれるバナナの揚げ春巻きや豆腐に黒蜜やタピオカが乗った「タホ」などのローカルスイーツからハンバーガーやピザなどのファストフードまで人によって様々で、時には間食の域を超えて一食分の食事をしっかり取る光景もよく見受けられます。特にJollibeeというローカルファストフードチェーンはメリエンダでも大人気で、フライドチキンとライスのセットを目当てに連日多くの方が利用します。フィリピンはマクドナルドの店舗数が東南アジアで最多なのですが、国内におけるJollibeeの店舗数はその2倍にも上り、世界で圧倒的シェアを誇るマクドナルドをもってしてもナンバーワンにはなれない唯一の国と言われるほどです。こうした地元に愛されるファストフード 店の存在が、メリエンダ文化を持つフィリピン人の胃袋を支えていると言えるでしょう。
そんなフィリピンですが、こうした食文化も背景にあってか、病的肥満率はアジアの中でも第4位となりました。また、日本よりも平均寿命が約20年も短く、心臓病、糖尿病、動脈瘤など、不健康な食事と運動不足が原因の非感染性疾患が死因の7割近くを占めるまでになりました。
こうした現状を踏まえ、政府も健康リスクを減らすための様々な取り組みを行っています。フィリピン健康省傘下のフィリピン国家栄養協議会は毎年7月をNutrition Monthと定め、フィリピン中の学校で食育に関するイベントを実施したり、貿易産業省は加糖甘味飲料の製造者に対し、2018年7月以降健康被害の警告を商品ラベルに表示するよう促すなどしています。
私の駐在するシンガポールでも、リー・シェンロン首相がナショナルデーラリー において糖尿病対策について述べられたことは記憶に新しいですが、食にまつわる健康問題は、今や東南アジア全体に共通する課題と言えそうです。
シンガポール事務所 所長補佐 石渡