近年、多くの自治体の首長が、その地域の課題解決策を海外に求め、世界各都市、地域を訪問するなか、愛知県も数多くの国、都市、地域とMOUを結び、具体的な施策に繋げています。
愛知県知事は、2019年9月8日から15日にかけ、経済、スタートアップ支援、文化、観光、人材交流など幅広い分野での交流を推進し、お互いの更なる発展につなげるため、インドネシア、シンガポール、ベトナムの3か国4都市を訪問しました。
インドネシアの日本企業の投資額の半分以上が愛知県企業(約250社)であるほか、インドネシアの在留邦人20,000人のうち5,000人が愛知県人となっています。一方で、愛知県には全国最多の六千人を超えるインドネシアの方が在住されるなど、愛知県とインドネシアには強いつながりがあります。愛知県は2017年2月に、インドネシア経済担当調整大臣府との間で「経済交流に関する覚書」を締結、ジャカルタ市内に「愛知県インドネシアサポートデスク」を2018年1月に開設するなど、現地進出県内企業の支援を強化しています。
ユスフ・カッラ副大統領との面談では、道路・港湾インフラの充実など投資環境の改善支援、愛知県への領事館の設置を要望しました。カッラ副大統領からは、「鉄道などのインフラ整備や人材育成・研修に注力して、日本からの投資を増やし、経済関係の更なる強化を図りたい。領事館設置についてもしっかりと承った。外務大臣にも話をする」との発言がありました。ガルーダ・インドネシア航空のアスカラCEOとの面談では、中部-ジャカルタ直行便就航の利用促進につながる具体的な取組をすぐに実施していただけるとの発言をいただきました。
シンガポール国立大学(NUS)とは昨年8月「科学技術分野における連携協力に関する覚書」を締結しています。今年の3月には、あいちシンクロトロン光センターとシンガポール国立大学のシンクロトロン光施設が連携し、研究成果について紹介するセミナーを「知の拠点あいち」でも開催するなどの連携も進めています。
今回は、NUSとの間に、「スタートアップ支援分野における連携協力に関する覚書」を締結しました。これは連携協力の範囲を拡大し、新たにスタートアップ支援分野を定めたものです。ボウイ副総長からは「両者の連携協力に大いに期待する。NUS と愛知の双方から多くの学生やスタートアップを送り出し合いたい」との発言がありました。
次期首相と言われるヘン副首相兼財務大臣との面談では、スタートアップ支援の発展に向けたシンガポール政府の支援を要請に対し、「ネットワークづくりは大事で、NUS と進める人材育成等に係る連携は大変ありがたい。想いを同じにする知事との協力関係を更に強化していきたい」との発言をいただきました。
愛知県が「友好交流及び相互協力に関する覚書」を締結しているホーチミン市のフォン委員長と面談し、「愛知県が協力するコンセッション方式による高速道路整備については、今後、人民委員会政府としても具体化していきたい。中部-ホーチミン直行便についても、今後の観光、経済分野の連携強化を図ることで、乗客増に繋がると考えている」との発言があり、様々な分野において連携を強化していくことが確認されました。さらに、愛知県で毎年開催されている「ベトナムフェスティバル in愛知・名古屋」は県民と在住ベトナム人が相互理解を深める貴重な場であるとの共通認識に基づき、関係機関が引き続き連携・協力していく旨を記した覚書を締結しました。
愛知県の産業構造は、自動車を始めとする製造業の占める比率が高く、製造品出荷額等は1977年以来、41年連続で全国1位を維持しています。GDPは2015年度に約40兆円に到達し、大阪を抜いて全国第2位となっています。しかしながら、デジタル技術の進展により、自動車産業は100年に一度の大変革期を迎え、この地域の産業構造を大きく変化させようとしています。この大変革に、愛知県は積極的に海外のステークホルダーと連携・協力することで、モノづくり産業の競争力をさらに高めて行こうとしています。行政単独ではなく、大学、経済界、空港会社等と一体となり、また継続して意見交換をすることで、実効的なネットワーク体制を基に新たな取組が実現してきています。
例えば、コーポレートイノベーションの手法として、スタートアップ支援が期待されていますが、覚書を締結しているNUSは、日本で初のNUS海外カレッジ(NOC)を名古屋に開設する準備を進めるなど、大企業を多く抱えるこの地域の特色を生かした戦略が着実に進んでいると感じます。
また、広域的視点のもとでの国内各都市との連携は不可欠です。2027年のリニア中央新幹線の開業により誕生するメガリージョン「リニア大交流圏」は、人口約5,000万人、GDPは約250兆円となり、インドを超える規模となる見込みです。国内外・産官学との連携により、世界の都市間競争に負けないモノづくりの強化、産業の革新・創造拠点を目指す愛知県の取組に期待が高まっています。