2020年1月中旬、インドネシアのスラバヤ市を訪問した際に感じた、日本の自治体のプレゼンスについてご紹介します。
スラバヤ市はジャワ島北東部に位置する東ジャワ州の州都で、人口は約287万人(2017年)、首都ジャカルタに次いでインドネシア第2の都市です。市長のトリ・リスマハリニ氏は、元スラバヤ市開発計画局長で、「グリーン&クリーン(緑豊かで清潔)」なスラバヤを目指し公園整備や緑化政策、環境改善を進めたことでも有名です。実際に訪問してみて、確かに他の東南アジア諸国の都市と比べても、市内中心部に緑が多くまた道も綺麗だと感じました。
高知市とスラバヤ市は1997年に姉妹都市提携に調印しました。2003年より毎年スラバヤ市では、在スラバヤ日本国総領事館、スラバヤ市、高知市の共催により「スラバヤよさこい祭」が開催され、市の一大イベントとして定着しています。2019年7月に開催された第17回では、よさこい踊りコンテストに約600人が参加するとともに、会場を公園から一般道に変更したこともあって、より一層の多くの市民がよさこい祭りを一目見ようと集まるなど、大変な盛り上がりをみせたそうです。
また、高知市役所では、JETプログラムで配置されたスラバヤ市出身のCIR(国際交流員)が活躍しています。現在までに計6名のCIRが高知市に派遣されており、インドネシアに帰国後もスラバヤ市を中心に、JETAAインドネシア支部(JETプログラム同窓会)として両市間及び日本とインドネシア間の架け橋となって活動しています。彼らは上記よさこい祭りでコンテストの審査員を努めているほか、1月中旬にスラバヤ市内のショッピングモールで開催された「スラバヤ日本祭り」では元・高知市CIRの3名が、高知市やよさこいについてステージ上で紹介し、集まった市民が耳を傾けていました。
北九州市とスラバヤ市は約20年前から、生ごみのコンポスト(堆肥)化協力事業等を通して信頼関係を築いており、2012年には環境姉妹都市提携に関する覚書を締結しました。
長年にわたり北九州市は様々な事業を行っていますが、今回は、スラバヤ市において市や現地NPO法人と協力して実施している「マングローブ林を活用したエコツーリズム推進事業」の活動現場を視察しました。クレアとしても当事業は、自治体等が取り組む国際協力事業のなかでも先駆的な役割を果たし、今後そのノウハウが参考になり得ることから、自治体国際協力促進事業(モデル事業)として助成しています。また、当事業は、過去の協力事業の調査で連携したNPOや、自治体職員協力交流事業(LGOTP)で北九州市にて研修し現在スラバヤ市河川投棄ごみ対策の担当をしている職員からの要望などを基に立案されており、これまでの両市間の関係を活かし、さらに協力を進めたものと言えます。
スラバヤ市に広がるマングローブ林には貴重な生物が生息していますが、河川汚染により生態系への影響が懸念されています。そのため、スラバヤ市民の環境に対する意識向上(環境学習施設の提案や環境学習プランの策定など)や、マングローブ林を取り巻く環境が改善され観光資源として活用されること(自然体験施設整備の提案など)による市の都市力向上を目指して、当事業が実施されています。
活動現場を案内してくれた現地NPO法人Nol Sampah(ノルサンパ:インドネシア語でごみゼロの意)によると、「地元漁師等と協力しプラスチックごみ除去やマングローブの植林など地道な活動を行っているが、時間がかかるうえ根本的解決にはならず、結局は市民一人ひとりの意識改革が欠かせない。周辺の土地は住宅になるなど開発が進んでおり、保護しなければどんどんマングローブ林がなくなり生物もいなくなってしまう危機感の中で、北九州市のノウハウを生かして協力してもらえるのは大変ありがたい。」とのことでした。
(参考)北九州市による生態系観察のためのカメラ設置の様子
https://www.youtube.com/watch?v=vUUTLj9hPVs
(インドネシア語の動画。北九州市提供。)
自治体間交流の成果は数値化しづらく見えにくいと言われますが、今回の訪問を通して、長年の交流、また特に人と人の交流の結果、日本の自治体のプレゼンスは交流先地域において着実に高まっていることを感じました。今後も国内外における自治体の海外との交流が活発に行われ、世界各地でつながりがより深まっていくことを期待します。