2016年のフィリピンの消費電力は2015年と比べて10%増加しました。フィリピ ンのエネルギー省は、エル・ニーニョ現象による気温の上昇で冷房設備の使用が増加したことを理由に挙げています。また、人口の増加と著しい経済の発展を見せるフィリピンでは、産業分野での電力の需要が増えています。
フィリピンの2015年の発電量のうち、水力を除いた再生可能エネルギ―(風力、太陽光、バイオマスなど)の割合は15%で、日本の2.9%に比べると大きな割合を占めていることに驚きます。そのうち、地熱発電の割合が13%と高く、地熱発電設備の容量はアメリカに次いで世界第2位であることはあまり知られていません。地熱を活用しているのは火山国であるフィリピンならではと言えるでしょう。
1 高い電気代の理由はフィリピンの電気料金は非常に高額です。1か月の電気の使用量を300kWhとした場合、電気代は約5,730円になります。フィリピンの平均的な家庭の月収がおよそ57,000円であることを考えると、この電気代がいかに高いかが分かります。多数の島からなるフィリピンでは送電や配電設備に多くの費用がかかります。また、設備の仕様上どうしても損失してしまう電力や、送電線から無断で配線し盗電されている電力もあり、これらを利用者に負担させていることも電気料 金を高くしている要因のひとつとなっています。
2 電力不足と地方の電化 フィリピンでは電力が不足しています。増え続ける電力需要に供給が追い付かず、停電が起こることもあります。この問題に対して、日本の商社もフィリピンの発電所に出資するなどしてフィリピンの電力供給を支えています。また、山間や離島の村に電気を通すことは、住民の生活を改善し社会経済の成長に寄与するとしてフィリピン政府の長年の重要な課題となっています。2011 年に目標とした32,441の村に電気を通す施策は、2016年の6月にその目標を達成 しました。現在は177の電気のない学校に電気を通す事業を進めています。
電力の供給を安定させ、国民の暮らしを明るく照らすため、政府の努力は続いています。
(シンガポール事務所所長補佐 川俣)