ミャンマーにおける女性の地位向上と教育に関する取組みを調査するため、ヤンゴン及びネピードーにある、政府機関や女性関連施設などを訪問しました。
調査期間 | 2016年6月20日(月)~6月24日(金) |
訪問先 | 【日本政府及び関連機関】 在ミャンマー日本国大使館、JICA、JETRO、日本財団、日本人材開発センター 【ミャンマー政府及び関連機関】 社会福祉省、内務省、女性起業家協会、Gender Equality Network(GEN)、Women’s Organizations Network (WON)、MPTジョイントオペレーション、UNFPA |
1 ミャンマーの現状
2015年11月8日の総選挙で、アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝し、2016年3月30日にNLD新政権が発足しました。スー・チー氏自身は現憲法下で大統領就任資格を有さないため、現在、外務大臣、大統領府大臣、国家最高顧問を兼任していますが、ティン・チョウ大統領は、就任演説で「新政権は、スー・チー氏率いるNLDの方針に沿うように樹立された」と、スー・チー氏が事実上の指導者であることを明示しています。
スー・チー氏以外の大臣もNLDや民間出身者が大半を占める一方、軍人が内務大臣、国防大臣、国境大臣に、軍事政権が組織した連邦連帯開発党(USDP)が宗教・文化大臣、労働・入国管理・人口大臣にそれぞれ就いています。
2 教育熱心なミャンマー
国民全体の識字率は89.5%と高い割合を占めています。僧院でも勉強を教えており、今回の調査で私たちに同行してくれたミャンマーの女性2人も僧院で日本語を勉強したとのことでした。
また、ミャンマーの人たちは教育熱心で、都心部では子どもに良い教育をさせるためにお金をかけ、塾に通わせることが当たり前になっています。地方でも、例えば2015年の夏に大きな洪水のため学校が流されたり浸水した地域がありましたが、1か月後には僧院や避難先の近くの学校で勉強を再開しており、避難生活をしていても子どもを学校に通わせるなど、教育に対する意識が極めて高いことがうかがい知れます。
ただし、暗記教育が中心のため、自ら物事を判断したり創造したりするということは苦手なようです。
試験の成績は一般的に女性の方が優秀で、日本のセンター試験に相当する、高校卒業大学入試試験でも女性の方が良い成績を取っており、最近の試験では上位10名中7名が女性でした。小学校や中学校の先生に女性が多かったり、理系の大学の教員でも半数以上が女性であるのは、給料が少ないからという見方もありますが、女性がまじめに勉強をして試験で良い成績を取っている証であると考えられます。
3 活躍する女性たち
今回、政府機関の社会福祉省と内務省、民間企業のMPTジョイントオペレーションを訪問しました。
ミャンマーでは子育てをしながら女性が働くのは当たり前で、例えば、社会福祉省で働く女性職員は産休を取ることができ、社会保険に入っていれば産休中の給与が全額支給されます。中央省庁はヤンゴンから離れたネピードーというところにあるため、単身赴任の母親や、配偶者をネピードーに連れて行く女性職員もいます。また、母親が働いている間、子どもを両親または保育園に預ける以外に、職場に連れて行くという選択肢もあり、周囲が子育てに寛容であったことが印象深かったところです。
賃金については政府機関、民間企業共に男女の性差(ジェンダー)による格差を感じたことはない、との声が聞かれました。
民間企業で働く女性の中には、「自分を磨くことができる職場か」、「自分の経験になるか」という理由から現在の職場を選んだという女性や、自分を磨き今よりも上の地位に上がるため、家庭があり仕事をしながらもMBAの資格を取得しようとしている高い意識を持つ女性もいました。そして、彼女たちは女性の地位向上のために「教育」や、「仕事に関する技術を身につけ能力を向上させること」が大切だと話していました。
4 ジェンダーによる格差はあるのか
伝統的な慣習などにより、女性は家事や育児などの固定的な役割を重視されたり、飲酒や車の運転を控えさせられたりしています。また、宗教的な背景によりパゴダ(ミャンマー様式の仏塔)には男性しか立ち入れませんが、これはミャンマーの女性たちにはジェンダーによる差別とは捉えられていないようです。
今回訪問した団体の中には、配偶者の飲酒や麻薬に起因する暴力、性教育を受けず知識がないことによる問題を深刻な社会問題と把えているものもあり、また、実際に女性への暴力対策に関する活動を行っている団体もありました。