2016年7月10日から14日にかけてシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ・エキスポ&コンベンションセンターで開催されたWorld Cities Summit 2016(世界都市サミット)のテーマ別分科会(強靭な都市やコミュニティの構築)に戸羽太 陸前高田市長と髙島宗一郎福岡市長が登壇しました。陸前高田市長は東日本大震災の教訓を活かした災害に強いまちづくりの、福岡市長は熊本地震への対応における市民参画・都市間連携の各事例を紹介し、世界100都市以上の参加者が集まる国際舞台において力強くアピールしました。各セッション終了後、両市長は各国の首長級の参加者からの相次ぐ名刺交換に応じたほか、報道機関からの取材を受けるなど、大いに注目を集めていました。
この会議は、世界各地の政府や都市のリーダーをはじめ、都市政策を担当する自治体幹部職員、学識者、産業界の専門家などが一堂に会し、「暮らしやすい持続可能な都市」の実現に向けて、都市が抱える課題の総合的な解決策を共有し、参加者同士のパートナーシップを構築することを目的として、シンガポール政府機関(Centre for Liveable Cities, Urban Redevelopment Authority)の主催により、2008年から隔年開催されています(今回で5回目)。
今回の会議に参加して興味深かったのは、会議開催によって得られる効果を主催者であるシンガポール政府機関が戦略的に位置付けている点です。講演会場ロビーでは、シンガポール政府の主要機関などによる自国の特色ある政策等がブース展示されており、各セッションの休憩時間には多くの参加者が足を運び関心を集めていました。また、会場の別の階に設けられたCity Solutionと呼ばれる展示会場は参加者以外にも広く公開されており、シンガポール政府機関のみならず国内外の企業がブースを設けて都市の課題解決に貢献する商品の売り込みを行っていました。また、Singapore International Water week(シンガポール国際水週間)及びClean Enviro Summit(クリーン環境サミット)が同時開催され、都市計画、水、環境の各分野の関係者を包摂することで、相乗効果の高い交流が活発に行われている印象を受けました。
会議への参加を通じて、海外都市の課題解決に関する先進事例を集めて都市力強化を図るとともに、海外からの参加者が集まる国際会議の場で、自国の政策PRや都市インフラ企業の商談につなげる機会を設けるなど、シンガポール政府が戦略的にこれらの一連の流れを促進させる仕掛けを随所に設けていることが分かりました。
もう一つ注目すべき点としては、参加都市の首長同士やシンガポール政府機関の幹部職員との個別面談の場が設けられたり、シンガポールの先進政策に関する視察や関連会議への参加などを通じて活発に情報収集や意見交換が行われたりしていたことです。自治体の政策を国際社会に幅広く紹介できる機会であることはもちろんのこと、シンガポール政府や海外都市の要人との関係を築く絶好の機会であることからも、この会議に参加することによって得られる効果はきわめて大きいと考えます。次回は、2018年7月8日から12日にかけて開催予定とのことです。日本からもより多くの自治体が参加されることが期待されます。