近年ベトナムを訪問する自治体の数は増加傾向にあり、当事務所が把握する限りでは、今年度は1月末現在、東南アジア全体273件のうち、ベトナムは57件とタイと同率で第1位となっています。県産品の輸出拡大を目的とした、各自治体首長によるトップセールスも盛んに行われています。
そのような中、今後の自治体の活動の場拡充の可能性を探るため、2017年1月13日(金)、昨年7月にホーチミン中心地にオープンした「ホーチミン高島屋」を訪問しました。オープンから半年経過した現在の状況と今後の取り組みについて報告いたします。
高島屋グループとして、シンガポール、上海に次ぐ3つ目の海外店舗であり、サイゴンセンターというオフィスやアパートメントも入居するビルの地下2階、地上3階を占めています。
ホーチミン市の目抜き通りといえるドンコイ通りの近くにあり、地元民だけでなく、観光客も集まる中心地に位置しています。さらに、目の前は都市鉄道1号線整備の工事中であり、完成すれば、ホーチミン市最大の市場であるベンタイン市場近くの駅と市民の娯楽の場である市民劇場近くの駅に丁度挟まれる形となり、さらに利便性が高まります。
近隣に大きなショッピングセンターがありますが、同一商品でも展示方法を工夫し、消費者に対して新しいライフスタイルを提供することを意識しています。特に、地下では和菓子や洋菓子、甘味やベーカリー、飲食店を展開し、「デパ地下」という日本独自の見せ方をすることで、ベトナム人の興味・関心を集めています。
メインターゲットは中心地に住む、中間層(年収60~120万円)から富裕層(年収120万円以上)のベトナム人および外国人ですが、想像していた以上に富裕層客の利用が多くなっています。土日は4~5万人が来店し、歩けないほど、店内は混雑します。
一番売上高が多いのは、おもちゃやオムツなどの子供向け商品であり、ベトナム人富裕層は子供や孫にお金をかける傾向があることがわかります。一方、思いのほか苦戦しているのは、地下階で取り扱っている食品とのことで、現在デイリー商材である総菜やスーパーマーケットの扱いがないため、消費者に飽きられてしまっていることが一因であり、今後はそれらの展開も視野に入れています。
オープン以来、自治体による物産フェアはまだ開催されていませんが、直接問い合わせが来ることも多いようで、自治体の関心の高さがうかがえます。また、ホーチミン高島屋側も魅力的な商材があれば、歓迎するとのことです。
しかし、ここで問題になるのが、輸入規制と外貨規制の厳しさです。
輸入については、品目ごとに日本からベトナムへ輸出が出来るように協議をする必要があり、現在果物では、りんごと梨(梨は今年1月16日付けで輸出解禁)しか輸出できません。もっと多くの種類の販路拡大を進めるためには、個別に交渉をする必要があるため、各自治体からの「○○を輸出したい」という声が重要になります。また、海外送金については、国外に外貨を持ち出す際の制限が厳しく、また手続きも煩雑であるため、時間と手間がかかります。
こういった状況にあるため、自治体による物産フェアの開催を望みながらも、現在まで開催には至っていません。今後、また新しい動きなどがございましたら、ご報告いたします。