2017年7月24日(月)、25日(火)にマレーシアのクアラルンプールで開催された「第1回世界イスラム観光会議」(マレーシア政府系団体のイスラム観光センター主催)にクレア職員が参加しました。会議にはマレーシア国内のみならず、台湾、韓国、インドネシア、シンガポールなど海外からも観光やホテルの関係者などおよそ200名が参加し、ムスリム(イスラム教徒)が安心して快適に観光を楽しむにはどうしたらよいか、さまざまな視点から講演がされました。
世界に17億人いるといわれるムスリムは現在も増加しており、所得水準の向上と共に、海外旅行をするムスリムも年々増えています。彼らが期待するサービスを提供することにより、観光地にとって大きな市場を手に入れることにつながります。
会議では、ムスリムに配慮するという意味の「ムスリムフレンドリー」という言葉が用いられ、ムスリムが外国に旅行する際に、彼らに配慮したサービスが求められていることが分かりました。
また、会議の開催地であるマレーシアは国民の約60%がムスリムで、東南アジアではインドネシアに次いで2番目に多くのムスリム人口を擁する国です。そのため、ムスリムが観光しやすい環境が整えられており、ムスリムが旅行しやすい観光地として世界第1位と評価されています。この環境整備のため、マレーシア政府ムスリムフレンドリーサービスのガイドラインである「マレーシアスタンダード」を定めています。
ムスリムに配慮する点としてまず、ハラールがあります。ハラールとは、イスラム法の教えに基づいて処理されムスリムが食べたり触れたりすることのできるもので、ムスリムが食事をする際に気を付けなければならないポイントです。会議の参加者の中には、魚介類はハラールなので刺身は食べられるという方もいて、魚を使った日本食はムスリムに受け入れやすいと感じました。(調理工程によってはハラールでない場合もあります。)なお、海外の場合は必ずしもハラールの認証を受ける必要はなく、食事の原材料を明記する、あるいは、「No Pork, No Lard」(豚肉及び豚肉由来成分を不使用)を徹底するだけでも十分とのことです。
また、1日に5回のお祈りをするムスリムにとってモスク(イスラム寺院)はなくとも、礼拝ができる清潔な小部屋が確保されている施設があることも重要なポイントです。
意外だったのは、日本は他の非イスラム国に比べ、台湾及び韓国と並んでムスリムフレンドリー先進国との評価が高かったことです。民間のレストランなどだけでなく、一部の自治体がムスリム向け観光パンフレットを作成している点は好印象のようです。
海外旅行に行く機会が増えている若い「ミレニアル世代」のムスリム旅行者の動向も注目すべき点です。デジタル世代の彼らは、旅先でウェブサイトやアプリを使ってハラールレストランや宿泊施設を検索しているとのことです。
また、フェイスブックなどのソーシャルネットワーキングサービスで友人と写真や情報を共有するので、ムスリムフレンドリーな対応をしている観光地をPRしその情報を広めてもらえれば、より多くの観光客を呼び込むきっかけになることが期待されます。
訪日観光外国人が年々増えていることに加え、東京オリンピック及びパラリンピックの開催に向けて各自治体で外国人の受け入れ体制をさらに整えていく必要があります。クレアシンガポール事務所は日本がより多くのムスリムに対して優しいおもてなしをできるよう、今後も自治体に情報を提供していきます。