クレアシンガポール事務所の職員が、2017(平成29)年8月23日(水)~25日(金)にカンボジア王国の首都プノンペンを訪問し、日系機関等からの情報収集や自治体の国際協力の現場の調査を行いましたので、その概要を報告します。
カンボジア王国は、面積:18万㎢(日本の約1/2弱)、人口:約1,577万人の国です。
1人当たり名目GDP はまだ1,229ドルと低いものの、リーマンショック以降、平均で7.0%のGDP成長率を維持しており、今後も引き続き高成長が見込まれています。
特に、プノンペンでは名目GDP 5,000ドル以上の世帯も台頭しており、個人消費が活性化し、ファーストフード店やブランド店が市内に続々と進出している状況です。
また、このような中間所得層の増加に伴い、訪日観光客も増加傾向にあります。2010年はわずか1,000人程度でしたが、15年には10,000人を突破し、16年は約12,000人が日本を訪れています。昨年9月にANAの成田〜プノンペン線が就航して日本へのアクセスが格段に良くなったこともあり、今後も訪日観光客のさらなる増加が期待されます。
(参考)カンボジア王国の概要
面積 | 181,035㎢ |
人口(2016年) | 約1,577万人 |
人口増加率(2016年) | 1.48% |
GDP成長率(2016年) | 7.0% |
1人当たり名目GDP(2016年) | 1,229ドル |
物価上昇率(2016年) | 3.0% |
イオンカンボジアを訪問し、カンボジア王国における日本産食品の動向についても情報収集を行いました。
イオンカンボジアは現在、プノンペンにイオンスーパー1店舗、小型店のマックスバリュー2店舗を展開しており、今後3年間でカンボジア王国全土に30店舗を展開する計画を持っています。
なお、スーパーマーケットとは別に展開しているイオンモールは、2014年6月にカンボジア王国における1号店をプノンペンに開業し、週末になると駐車場待ちの車が周辺に溢れるほど賑わっています。来年には同じくプノンペンに2号店が開業予定とのことです。
今回はイオンモール内にあるイオンスーパーを視察しました。
この店舗の来店客構成は7割がカンボジア人で、他は中国人、韓国人、インド人、日本人と続きます。
輸入規制があまり厳しくないためカンボジア王国には比較的多くの食品を入れることができるものの、日本産食品の値段は生鮮品、加工品ともに東南アジア産はもとより中国産、韓国産などと比べてもやや割高であり、そのため特に野菜や酒類の販売は苦戦しているようです。ただしこのような状況の中でも、衛生的で鮮度が良く、かつ東南アジアでは採ることができない日本産のイチゴ、桃、ぶどうといった果物は人気があるとのことです。また、イオンカンボジアでは日本産を取り扱っていないものの、カンボジア人は牛肉を好んで食べるとのことです。
なお、カンボジア人は酸っぱいもの、辛いものを好む一方で、しょっぱいものを食べる習慣がないため、他国では大人気のラーメンがあまり受け入れられないという話は意外でした。
現在、カンボジア王国内にはプノンペンを中心に寿司や焼肉などの日本食レストランが約180軒あります。生活水準の向上、訪日観光客の増加、食の安心・安全に対する関心の高まりなどを受けて、今後、日本食に対する理解が進み、ますます人気が高まることが期待されます。
内戦など様々な苦難な歴史を乗り越えてきたカンボジア王国では、これまで日本の国際協力がその復興を支えてきました。その中でもJICAと北九州市で取り組む上水道への技術協力は「プノンペンの奇跡」と言われ、大きな成果を上げています。現在、プノンペンの水道水は東南アジアでもトップクラスの質を誇り、飲むことも可能です。
JICAでは内戦直後の1993年からプノンペンの都市水環境プログラムに取り組み、上水道整備計画策定や資金協力による施設整備を行ってきました。2003年からは北九州市水道局が中心となり、「水道事業人材育成プロジェクト」がスタートし、現在もフェーズ3としてプノンペンだけではなく、カンボジア王国の8都市で技術協力を継続しています。
駐在する北九州市の職員にお話を伺うと、長年の国際協力はカンボジア人の生活の向上に貢献しているだけではなく、市のプレゼンスの向上、また技術協力をする職員の能力向上など、市としてのメリットも大きいとのことでした。
北九州市はこの技術協力をきっかけにプノンペンと姉妹都市提携を結んだほか、地元企業とタッグを組んでカンボジア王国内での水ビジネスに参入するなど新たな展開につなげています。
今回のカンボジア王国訪問では、高成長を続ける国の勢いを感じる一方で、街中にゴミが散乱しているなどインフラ整備がまだまだ不十分だと感じたのも事実です。JICAや北九州市が実施する国際協力事業などを通じて日本のプレゼンスを高めつつ、物心両面にわたって両国の絆が今後ますます強くなることが期待されます。