クレアシンガポール事務所の職員が、2017(平成29)年10月2日(月)~5日(木)にラオスの首都ビエンチャンを訪問し、日系機関等からの情報収集や高知商業高校による国際協力の現場の調査を行いましたので、その概要を報告します。
メコン地域の中央に位置し、東南アジア唯一の内陸国であるラオスは、面積が23万6,800㎢(日本の本州に相当)、人口が約649万人の国です。
1人当たり名目GDP(2016年) はまだ2,092ドルと低いものの、5年前の1,205ドルと比べて2倍程度となっています。ラオス経済は、公共投資の抑制による緊縮財政やタイの景気の落ち込みなどを受け経済成長率が低下傾向にあるものの、引き続き7%台を維持しており、今後も引き続き高成長が見込まれています。特に首都ビエンチャンでは一人あたりGDPが4,784ドルあり、消費意欲の高い中間層や富裕層が増えてきています。経済成長を背景とした消費者市場としての魅力の高まりや、外資自由化などを受け、今が進出の大きなチャンスといえます。
また、訪日旅行については、ラオスと日本との間に直行便がなく、ビザも免除となっていないため、まだ一般的ではありませんが、今後の経済成長に伴う伸展が期待されます。
ラオス政府は製造業を中心に外資企業を受け入れることで、国内の産業育成及び雇用創出を目指す方針を示しました。人件費が比較的安い水準であるため、2010年前後には縫製業を中心に「チャイナプラスワン」で進出する日系企業が増えました。近年では、タイと生産分業を行う「タイプラスワン」の進出先として注目されています。特にラオス人は子どもの時から農作業や手作業に慣れているため手先が器用であるという特徴があり、細かな作業を行う工程をラオスへ移す企業も増えています。
近年、タイの景気の落ち込みを受けて、製造業の進出は鈍化していますが、消費者市場の伸びを見越してサービス業の進出は増えてきています。
また、ラオスでは安定した雨量、肥沃な土地を背景に農業が盛んです。ラオス政府は食品加工など付加価値の高い農業生産を目指し、オーガニック栽培などを奨励しています。最近ではラオス南部のボラベン高原を中心に農業に関連する幅広い経済活動を行う「アグリビジネス」に注目する日本の企業、自治体も増えてきており、徐々に進出してきています。今後の成長が見込まれる分野の一つといえます。
ビエンチャン市内でたまに目にする日本の食品は、タイ資本のスーパーやコンビニエンスストアで取り扱われており、タイからの輸入によるもので、日本から直接入ってくる例は余りありません。当然、ビエンチャン市内での小売価格はタイよりも高くなりますので、ビエンチャン市民は陸路でタイへ渡り、国境近くのショッピングモールで日本食材などを買うという消費行動が一般的でした。しかし、2017年よりビザなしでタイへ渡れる回数が年2回までと制限され、以降は30日有効の30USドルのビザが必要となりました。
そのため、ビエンチャン市民の消費行動が国内に移りつつあり、今まさに転換期を迎えているといわれています。ラオスでも日本製品は安全安心なものとして人気があるため、今後、日本の食材をはじめとした日本製品の一層の進出が見込まれます。
高知商業高等学校が、生徒会を主体として、1994年からラオスに学校を贈る国際協力活動を展開しています。これまで6校の小学校、1校の中高等学校、1園の幼稚園が建設されました。商業高校の特性を生かし、以下のとおり学校全体が参加できる仕組みとしています。
【学校建設事業の仕組み】
・校内に模擬株式会社を設立し、生徒、教職員、保護者が株主となって出資。
・次に、毎年代表生徒がラオスを訪問し、出資金をもとに伝統商品を購入して高知で販売。
・そしてその利益について、配当とともに出資金を株主に返金し、残金について高知ラオス会を通じて学校建設活動に充てる
高知商業高校では1996年から20年以上毎年、ラオス研修として、ラオスを訪問し、ラオス学校建設活動に関わり、仕入れや現地小学生との交流を行っています。 またラオスでの生活体験などを通して、国際ボランティア活動を推進し、もって国際人の育成を図るプログラムとしても活用されています。学校近隣の村での「高知」の知名度は抜群で、子どもたちも毎年の交流をとても楽しみにしているとのことです。訪問したバン・ポングン小学校、バン・ポングン幼稚園、バン・サンニャイ小学校の校長、学区域の村の村長へ話を伺うと、「村の子ども達の学ぶ場ができて、高知には大変感謝している。園舎、校舎は村人もボランティアでメンテナンスなど行い、末永く使用したい」とのことでした。
校舎を大事に使い、子ども達も伸び伸びと楽しそうに学習している姿が大変印象的でした。
本事業が高知とラオスとの架け橋となっており、地域による国際協力、国際交流の優良事例といえます。