1.『Food Japan 2017』について
今年で6回目となる日本食の総合見本市「Food Japan 2017」が10月26日 から28日の3日間、シンガポールで開催され、日本(38都道府県)、シンガポール、香港、タイ、マレーシア、インドネシアから283社・団体が出展しました。日本の自治体からは、青森県、栃木県、愛知県東海市、京都市、山口市、山口県下関市、香川県、鹿児島県いちき串木野市等が出展し、初日から来場者との間で活発な商談が行われました。会場では、全国各地からの目新しい商品に注目が集まったほか、ハラール認証を取得したカレーや動物性成分が入っていないベジタリアン向けラーメンなど、多民族・多宗教国家であるシンガポールを意識した商品が関心を引いていました。
■開催概要
開催期間 | 2017年10月26日(木)~28日(土)
(10月26、27日はビジネス関係者向け、28日は一般向け) |
開催場所 | サンテック・シンガポール国際会議展示場 |
名称 | Food Japan 2017 |
主催/後援 | Food Japan実行委員会 (OJ Events Pte Ltd)/
農林水産省、日本貿易振興機構、観光庁、日本アセアンセンター、 在シンガポール日本国大使館、シンガポール政府観光局、 日本食品機械工業会、自治体国際化協会他 |
来場者数 | 11,061名(2016年度実績:11,525名) |
2.自治体ブースの様子
(1)和牛と梨のプロモーション(栃木県)
4回目の出展となる栃木県は、『とちぎ和牛』と『にっこり(梨)』の2品を紹介しました。
とちぎ和牛は、シンガポール国内で取り扱いを行っている業者が販売とPRを行いました。シンガポールでは店頭での販売は少ないものの、レストランでの使用が多く、ショーケースに並べられたきれいな和肉に、レストランのシェフや飲食店関係者が高い関心を示していました。
和牛は、「Wagyu」という言葉でシンガポールにも浸透しており、何ランクの肉なのか、産地はどこか、またどこの部位なのかなど詳しく尋ねてくる方もいて、和牛の知識が深いことに驚きました。一方で、切り落とし肉、煮込み用の肉について調理方法を尋ねる方もおられ、家庭で料理をすることが日本より少ないシンガポールでは、調理しやすいレシピを提案することで和牛の販売促進にもつながると感じました。また、試食用の肉を焼き始めると、ブースには多くの方が集まり、嗅覚と味覚を刺激する宣伝方法は非常に高い効果がありました。
にっこりは栃木県産の品種の梨で、なんといっても大きな果実が特徴です。大きいものでは重さが1kg以上もあり、来場者はその大きさに驚いていました。ただ大きいだけではなく、梨の甘さとシャリシャリとした食感をしっかりと味わえることも魅力です。にっこりは、今後シンガポールでも販売が開始されます。シンガポールには、手に入りやすい値段の他国の梨が多く流通しているので、他の商品との違いをアピールし独自の魅力を定着させることで、販路拡大につながっていくと思われます。
(2)イチジクの需要を探る(愛知県東海市)
昨年に引き続き2年目の出展である愛知県東海市のブースでは、『生のイチジク』と『イチジク及びミカンのピューレ』を紹介しました。昨年出展時に、イチジクやラズベリーなど4種類の果物のジャムを紹介したところ、シンガポールではイチジクが珍しいとのことから、イチジクジャムがひと際多くの関心を集めました。これらのことを背景に、今回のFood Japanでは、生のイチジクをメインにテストマーケティングを行いました。予想通り、生のイチジクへの注目は高く、美容やダイエットによいという点から、特に女性からの人気を集めていました。
また、ピューレに関しても、ミカンと比べ圧倒的にイチジクの人気が高く、汎用性の高い商品であることから、レストランやスイーツ店、食品加工業者等から多くの問い合わせがありました。
しかし一方で、今回紹介したイチジクの生産者は、生のイチジクは、熟れやすく、傷みやすい果物であるため、輸出に際し多くのケアが必要となってくること、また、ピューレについては、はみ出し品(熟しすぎているものや見た目が悪いもの)をもとに加工しているため、安定した量・味の商品を製造することが困難であることなどの課題を発見しました。これらをクリアすることで、今後の販路拡大に繋がることが期待されます。
(3)クラフトビールと食品乾燥機の可能性(山口市)
山口市としては昨年に引き続き2回目の出展で、市内の2事業者が来星しました。
クラフトビールの製造販売を行う山口地ビール株式会社は、すでに台湾、オーストラリアへ海外展開しています。今回は、更なる市場を開拓するためシンガポールへ出展したとのことです。
シンガポールにおいても、クラフトビールは人気があり、様々な飲食店において日本のクラフトビールを目にします。同社のクラフトビールは、製造工程に最新設備を導入することにより、賞味期限を15か月まで伸ばし、輸送に時間のかかる海外に対して他社商品との差別化を明確にして売り込みを行いました。
ブースでは、7種類のクラフトビールの試飲を実施しました。特に山口の食材を使用した桃や夏みかんのクラフトビールが人気で、フルーツの香りが強く飲みやすいという意見をいただきました。また、飲食店のオーナーがブースを訪問され、クラフトビールを店舗で販売したいと商談につながりそうな案件もいくつかありました。
食品乾燥機の製造販売を行う株式会社木原製作所は、食品乾燥機のPRとシンガポール市場での反応を見るために出展しました。
この食品乾燥機は主にフルーツを乾燥させるために開発された製品で、他社製品と異なる点は長い時間を使ってフルーツを乾燥させることにより、フルーツそのものの色のまま乾燥することができ、香りもしっかりと残ることです。アメリカ製の食品乾燥機を使用されている飲食店経営者が来場された際には、フルーツを乾燥させるとどうしても茶色っぽくなり、香りもなくなってしまうため、ぜひ使用してみたいとの要望がありました。
来星当初は、どこに売り込みを行えばいいのか明確ではなかったものの、このように来場者と意見交換をする中で、料理教室や飲食店、バーなどでの需要が見えてきました。
いずれの事業者もこのたびの出展を通じて売り込み先が明確になったことで、今後の海外展開に繋がることが期待されます。