2017年11月1日(水)~5日(日)まで、ブルネイ・ダルサラーム国で、ブルネイ内務省(以下、内務省)が「一村一品EXPO~1 Kampung 1 Product Brunei Darussalam EXPO 2017~」を開催しました。これは、現国王の即位50周年を記念したもので、一村一品をテーマに商品の展示や販売を行うほか、各種セミナーも同時開催されました。
クレアシンガポール事務所は今回、在ブルネイ日本国大使館(以下、大使館)と協力をして、このセミナーの講師として、兵庫県豊岡市から職員を招聘。また、日本企業として唯一参加した静岡県の製茶会社のブースをはじめEXPOの様子を取材しましたので、ご紹介します。
今回、内務省と大使館のご協力をいただき、ブルネイで一村一品活動に取り組む「カポック(Kapok)村」を訪問し、特産品であるバナナチップスの生産工程の視察及び活動内容について聴取しました。カポック村は、地元でとれる質の高いバナナを使ったバナナチップスを一村一品商品として生産しており、「オリジナル、ストロベリー、ジャックフルーツ、ミロ、ドリアン、パンダンリーフ、とうもろこし」と7つものフレーバーを持つことが特徴です。5年間、活動を継続していることや、その段階を踏んだ取組が評価され、第3回ASEAN リーダーシップアワード(NGO部門・地方開発・貧困撲滅分野2017年)ほか各賞を受賞しており、ブルネイで一村一品運動に取り組む村の中では先進的な存在とされています。より多くの消費者に商品を供給することを狙い、今後のオンライン販売を検討していますが、一方で、バナナの供給が不足していることや、パッケージに改良が必要な点が多くあることなどの課題も抱えています。豊岡市職員からは、「質が高いのであれば、生産量を限定することで、より高いプレミア感を与えるという方法も効果的」、「長期保存できるようなジップロック型にしたり、フレーバーが多くあることがわかるような見た目にしたりすると、より手に取ってもらいやすくなるのでは」というアドバイスがありました。
実際のバナナチップスの生産工程はシンプルなものですが、高齢の女性に積極的に従事してもらい、新たな雇用を生み出す努力もしています。
内務大臣の挨拶、新しい一村一品活動のロゴマークの発表で幕を切ったEXPOですが、会場には約150のブースが立ち並び、ブルネイの伝統的なお菓子やかご製品、はちみつ、竹細工などの工芸品が販売されていました。それぞれのブースは、各村の諮問委員会(MPK)によって運営をされており、先に視察をしたKapok村も参加し、特産品であるバナナチップスほか珍しい果物などを販売していました。日本から唯一参加したのは、静岡県のハラダ製茶株式会社で、静岡県東南アジア駐在員事務所からの紹介により、内務省および大使館の協力を得て、今回の参加となりました。同社は、すでにブルネイに緑茶や玄米茶の商流を持っており、来場者に対してサンプルを配りながら、商品を販売しました。
今回のEXPOの物販では、全てハラル認証を得ているものという条件があり、非常に高いハードルに感じられました。しかし、緑茶は原材料が自然由来成分であり、「身近なものでありながら実はハラール商品であった」という例の一つでした。試飲をし、商品を購入するムスリムの方の姿も多く見られました。
また、大使館ブースでは、各自治体の観光パンフレットやポスター、着物や伝統工芸品を展示。加えて、ここでもハラダ製茶の商品の展示と試飲を行っていました。
EXPO会場ではセミナーも行われ、兵庫県豊岡市の職員が「コウノトリを通じた地域ブランドの創出」をテーマに講演をしました。一度絶滅したコウノトリを復活させ、共に生きることのできるような環境に配慮した社会をつくることで、お米を始めとした農産品に、「安心・安全」という付加価値を与えるブランディングにつなげることができたこと、すなわち環境保護と地域経済の活性化は両立可能なことなどを、聴講者に対して強く訴えました。
セミナーの参加者の多くは、一村一品活動にまさに従事をしている方々であったため、直面する課題への解決策をもとめ、また未来に対しても危機意識を持たれていました。農法に関する具体的な質問も上がりましたが、「ブルネイと日本では気候や地質が違うことから、そのまま真似できるようなものではなく、そもそもこういった環境に優しい農法によるお米をブルネイの人々が求めているのか、その需要と供給にかかっている」と、豊岡市職員は答えました。無理に何かを見つけるのではなく、既に地元にあるものを使い、豊岡市の取組の核である「共感」という感情を住民が広く持ちながら取り組んでいくことが重要であると感じました。
今回のセミナーをきっかけとして、ブルネイの各村が今後、一村一品活動により積極的に取り組んでいくことが期待されます。