タイにおける地方財政及び税制度について現地調査を行うため、バンコクにある政府機関などを訪問しました。
また、「徳島県ツーリズムセミナー2017」や「ラムウォン盆踊り大会」に参加し、取材を行いました。
あわせて、バンコク中心部で日本産食品を取り扱う商業施設などを視察しました。
期 間 | 2017年12月15日(金)~20日(水) |
訪問先 | ①内務省地方自治振興局
②地方分権委員会 ③バンコク都 ④King Prajadhipok’s Institute ⑤JETROバンコク事務所 ⑥徳島県ツーリズムセミナー2017 ⑦日タイ修好130周年記念事業「ラムウォン盆踊り大会」 ⑧バンコク中心部の商業施設 |
1 「タイの地方財政及び税制度」に関する現地調査
(1)タイの概況
タイは、東南アジアの西部に位置し、北部から西部にかけてはミャンマー、北東部はラオス、東南部はカンボジア、南部はマレーシアと国境を接しています。面積は51万4,000㎢で日本の約1.4倍、人口は6,572万人で日本の約半分です。
日本とタイの関係においては、1887年9月26日に国交が樹立して以降、人的交流の拡大、経済関係の強化等ますます緊密度を増しています。2017年9月には日タイ修好130周年を迎えました。タイ人の日本に対する関心は高く、日本食のみならずアニメや漫画、映画等の日本のポップカルチャーも広く浸透しています。また、2013年7月にビザ免除措置を実施して以来、日本を訪れるタイ人の数は増加し、2016年の訪日タイ人の数は約90万人に達しています。このようなことから、日本の地方自治体のタイに対する関心は年々高まっています。
(2)タイの地方財政及び税制度
タイでは、1997年の憲法改正で地方分権の視点が多く盛り込まれ、地方分権委員会や内務省自治振興局の設置のほか、地方自治に関する選挙制度(長や議会)が規定されるなど大きな分岐点となりました。
これにより、国と地方の事務分掌や自治体間の財源配分の見直しが進められていますが、地方自治体の自主財源は10%程度しかないなど、国からの交付金や補助金に大きく依存している状況です。タイでは自治体間の税源偏在が大きく、交付金や補助金によりこれらを是正し、等しく行政サービスが提供できる仕組みとなっています。
また、1999年の地方分権法では、政府の歳入の35%以上を地方自治体に補助金として支出することと規定されましたが、実際には執行されず、2006年の同法改正時に削除されてしまい、現在では政府の歳入の27~28%を自治体に分配する慣例となっているようです。
このように、タイでは地方自治体の財政面での自主自立が大きな課題となっています。
地方自治体の歳入は大きく4つあり、1つ目は土地家屋税や看板税など自治体自らが徴収する税、2つ目は住宅税や酒税など自治体の代わりに中央政府が徴収する税、3つ目は中央政府が徴収して、その一部を地方自治体に分配する地方分与税、4つ目は補助金となっています。
地方自治体の自主財源は、①税金、②手数料及び罰金、許可金、③資産収入、④インフラ及び商業による収入、⑤資本収入(資産の売却など)、⑥その他の収入(寄付金など)の6つがあります。
2017年の地方自治体の収入は、約6,900億バーツで国の歳入の29%ほどを占めています。
地方自治体が自ら徴収する税金の例として、「ツバメの巣税」というものがあり、自然発生するツバメの巣のみが課税対象となっています。これは、76県中9県のみで徴収されており、ツバメの巣を採る権利に対して課税されます。利権を誰に与えるかや利権料の額はそれぞれの県の委員会で決められ、利権料として年間としていくらという形もあれば、採れた量によって徴収するところもあるそうです。
利権料は、300万バーツまではその自治体が全額、300万バーツを超える場合は、その超えた分の4割がその自治体、残りの6割は県内の他の自治体に分配されるという仕組みです。
また、これまでは天然の巣のみが対象でしたが、ツバメそのものが保護対象になっていることから、今後は養殖の巣も対象になるとのことです。
※「タイの地方財政及び税制度」の詳細については、今後クレアレポートにまとめます。
2 徳島県国際観光テーマ地区推進協議会主催「徳島県ツーリズムセミナー2017」
12月16日、徳島県の人気観光スポットや物産の魅力、また徳島県関連旅行商品の造成、徳島県の観光記事化のためになる情報等をPRするため、現地の旅行、メディア関係者を招待し、「徳島県ツーリズムセミナー2017」が開催されました。
セミナーでは、県職員が県内の風景や食事などの写真を見せながら説明を行い、参加者からも多くの質問が投げかけられていました。また、徳島県阿波踊り協会に所属する有名連「娯茶平」の踊り子による勇壮な男踊りや、優雅な女踊りも披露され、参加者は踊りの輪に加わり一緒に楽しんでいました。
会場には約1万人が集まり、日本に関心のあるタイ人も多く訪れることから、このような場での自治体PRはきわめて有効であると感じました。
3 日タイ修好130周年記念事業「ラムウォン盆踊り大会」
12月16日に国立競技場で開催された「ラムウォン盆踊り大会」は、タイ社会との文化交流を目指し、タイ庶民の踊りであるラムウォン(輪踊り)と日本の盆踊りを両国民が一緒になって楽しむイベントとして1987年から開催されています。1993年以降は、洪水や反政府デモなどの影響で中止や延期となった年もあるものの、概ね2年に1度開催されてきました。2016年は前国王の崩御に伴い中止となったため、今回3年ぶりの開催となりました。
オープニング・アトラクションでは、琉球舞団「昇龍祭太鼓」タイ支部やよしもとエンタテイメント(タイランド)所属のアイドルグループ「SWEAT16!」によるパフォーマンスのほか、岩手県の「盛岡さんさ踊り」なども披露されました。
引き続き行われた開会式では、タイ外務省東アジア局のシントン・ラーピセートパン局長、タイ政府観光庁のユッタサック・スパソーン総裁、在タイ日本国大使館の佐渡島志郎大使、タイ国日本人会の島田厚会長によるスピーチの後、森本斉ラムウォン盆踊り大会実行委員長による開会宣言により盆踊り大会がスタートしました。
タイ側からは、タイ政府観光庁に招聘されたタイ国立舞踊学校カラシン校による東北地方の伝統舞踊が、日本からは、徳島県阿波踊り協会に所属する有名連「娯茶平」による本場阿波踊りが披露されました。
日タイ修好130周年記念事業のクロージング・イベントとして開催された「ラムウォン盆踊り大会」ですが、やぐらの周りでは多くの来場者が見よう見まねで踊り、フィナーレの打上げ花火では会場が大歓声に包まれるなど、大変盛り上がっていました。
会場には約1万人が集まり、日本に関心のあるタイ人も多く訪れることから、自治体PRの場として有効であると感じました。
4 バンコク中心部での日本産食品の販売状況
タイでは、2016年の前国王崩御後、企業が販促イベントを自粛したり、消費者の間でも娯楽消費を控えたりするなどの動きが広がり、経済状況が停滞気味になっていましたが、服喪期間が終わり、上向きになっているという話を聞きます。
バンコク中心部のスクンビット通り沿線には、多くのショッピングモールが立ち並び、日本産の食品を取り扱う店舗もいくつかあります。
日本人駐在員が多く住むプロンポン・エリアには、タイ百貨店大手のザ・モール・グループが運営するエンポリアムやエムクォーティエがあり、エムクォーティエ内の食料品売り場では、日本人の家族連れの姿が多く見られました。
また、このエリアには日系スーパーマーケットのUFM Super Fuji(フジ・スーパー)もあり、日本産の食品のほか、化粧品や日用品も豊富に揃っています。訪問した際には岩手県フェアが開催されており、高級リンゴをはじめ岩手県産の食材を積極的に売り込んでいました。
観光客向けの大型商業施設が立ち並ぶサイアム・エリアには、バンコク伊勢丹やサイアム・パラゴンがあり、豊富な品揃えを誇る食料品売り場では、お土産を買い求める観光客や贈答用の日本産高級フルーツを購入するタイ人を多く見かけました。
いずれの店舗でも、日本産の食材として、日本でも旬を迎えているリンゴやミカン、柿、タイでもポピュラーなイチゴが日本の3倍程度の価格で売られていましたが、店舗の方のお話では、個人消費用に購入するタイ在留邦人や贈答用に購入するタイ人も多くいるとのことでした。