経済成長が続くマレーシア、インドネシアといった東南アジアのイスラム諸国は、国民の所得向上に伴い、新たな消費市場及び観光誘客のターゲットとして世界から注目を集めています。
その一方で、イスラム諸国をターゲットとするには、イスラム教徒(ムスリム)の生活全般に関わる考え方「ハラール」(神に許されているモノ・行為)、そしてこのハラールに基づいてどのような商品・サービスが取引されているかを理解する必要があります。
このため、当事務所は、4月4日から7日までマレーシアのクアラルンプールで開催された世界最大級のハラール産業展示会「MIHAS2018」(主催:マレーシア国際貿易産業省)の視察を行いましたので、その概要を報告します。
1 多種多様な産業に及ぶハラール市場
今年で15回目となる本展示会には、世界36か国から800以上の事業者が出展しました。
ハラールはムスリムの生活全般に関わる考え方であるため、出展事業者も多種多様な産業に及んでいました。飲食料品や医薬品、化粧品など人の体に触れるものはもちろんのこと、観光や物流、さらには金融商品までもが対象となっており、ハラール市場の幅広さを強く実感しました。
2 事業者単位で出展した日本、国単位で存在感を放ったライバル国
国別の参加状況をみると、日本からは6事業者が出展しました(※出展確認ができた事業者で、日系現地企業を含む)。昨年のジャパンパビリオンのように、まとまっての出展ではありませんでしたが、醤油や餃子などハラールに対応した日本の食品は来場者の関心を集めていました。
一方で、中国・韓国・台湾・タイといった国々は、国単位のパビリオンを設置し、本展示会で強い存在感を放つとともに、ハラール市場への力の入れようを大変強く感じました。
韓国の出展事業者に話を聞いたところ、「韓国は小さい国であるため、国全体として国外へ積極的に目を向けていかなくてはいけない」とのことでした。
3 ハラール市場参入への一つのカギ「ハラール認証」
食品加工技術、流通が発達するにつれ、一般的なムスリムの消費者には、目の前の商品がハラールなのか判別しづらくなっています。このため、専門家がハラールであることを保証する制度として「ハラール認証」があり、マレーシアの「JAKIM」やインドネシアの「LPOOM MUI」などの認証機関があります。
日本からの出展事業者は、これらの機関からハラール認証を受けており、その大きな効果として2つの点を教えていただきました。
① 販路の垂直的拡大
ハラール認証を受けることで商品の「信頼性」が担保され、これまで商品を取り扱ってもらえなかった大手チェーン店などに販路を拡大することができた。
② 販路の水平的拡大
ハラール認証には認証機関(国)同士の「相互認証」を行っているものがあり、一つの認証を受けることにより、もう一方の市場に参入することが可能となった。
例)マレーシア「JAKIM」とインドネシア「LPOOM MUI」の相互認証
※輸入規制、食品規制とは別ですので、ご注意ください。
4 ハラール市場の展望
民間調査会社の報告によると、2015年に1.9兆米ドルであったムスリム消費は、2021年には3兆米ドルに拡大すると見込まれています。
また、人口でみると、2010年に16億人であったムスリム人口は、2020年には19億人となり、世界の4人に1人がムスリムとなると言われています。
このように今後も拡大が見込まれるハラール市場について、当事務所では継続して調査を行い、情報を発信していきます。