【所管国に追加!】スリランカにおける自治体交流の可能性を探る

2018年6月、クレアシンガポール事務所は、スリランカを訪問し、現地の経済情勢や市場動向、自治体間交流の現状や今後の可能性等について、関係機関からのヒアリングや意見交換を行ってきました。

1 スリランカの概要

皆さんは「スリランカ」と言えばどんなイメージをお持ちでしょうか。「コロンボ」「インドの隣にある島国」「紅茶が有名」といったことを思い浮かべる方が多いかもしれません。スリランカは、2009年の内戦終結に伴う国内情勢の安定を背景として、ここ数年、経済の発展が進んでおり、治安も安定していることから、民間レベルでの注目が高まっています。まずは、そんなスリランカの基礎情報について紹介します。

  • 人口 2,120万人(2016年)
  • 面積 65,610㎢(北海道の約0.8倍)
  • 一人当たりGDP 3,906 US$(2017年)
  • GDP成長率 4.4%(2016年)
  • 宗教 仏教:70%、ヒンドゥー教:10%、イスラム教:9%、キリスト教:11%
  • 観光客 205万人(2016年)(うち、日本からの観光客:4.3万人)
  • 世界遺産 8カ所
  • 在留邦人 738人(2016年)
  • 日系企業 130社(2016年)
  • 姉妹都市 大分県臼杵市⇔キャンディ市、大阪府吹田市⇔モラトワ市、京都府宇治市⇔ヌワラエリヤ市
  • その他の自治体の動き
    • 愛媛県…みかんの栽培技術支援及び水産加工品の技術支援事業を長年に渡って実施(クレアの自治体国際協力促進事業(モデル事業)でも支援)
    • 高知県…港同士のネットワークを契機とした防災セミナーを2017年度に実施

2 訪問先等でのヒアリング内容

ここからは、今回訪問した日系関係機関や現地自治体関係機関等からヒアリングした内容の中から、特に興味深い情報等について紹介します。

(1)在スリランカ日本国大使館

  • かつては日本が最大のODA援助国であったが、現在は中国のプレゼンスが大きい。
  • 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたスリランカのホストタウンに、千葉県山武市、群馬県前橋市、岐阜県羽島市が登録されている。
  • 内戦(2009年終結)時の人権侵害についての国際社会への説明責任と、中国への過度な依存からの脱却が現在のスリランカの課題である。
  • 現在のスリランカ政府は連立政権であり、2つの党から大臣、副大臣が選ばれているため、意思決定に時間を要している。

(2)JETROコロンボ事務所

  • スリランカを「南西アジア」というカテゴリーでくくると、インドを始めとした数億の人口規模と比較して見劣りしてしまうが、経済水準を見れば、むしろASEANの国々の方が近い。
  • スリランカは、日本と同じ仏教国であり、メンタリティーは近いものがある。また、他の宗教も尊重し、宗教間での争いを避けようと考えている人が多い。
  • 日系進出企業の多くは、欧米向けの輸出のために事業を展開しており、スリランカの景気の影響をほとんど受けない。
  • コロンボ港からは、ヨーロッパ、北米、東アジアの三方向に輸送できる(運河、岬、海峡を一回通過すれば到達できるため)。世界中に工場を設けることができない企業が拠点を1か所設けるとした場合は優位性がある。

(3)JICAスリランカ事務所

  • 現在、スリランカへの投資・支援においては中国のプレゼンスが高く、日本が支援する分野として、道路等から、高度な技術を要する難しい橋などにシフトしている。
  • 上水道の技術協力事業には名古屋市や神戸市が協力している。
  • 自治体が進出を考える際のとっかかりとしての技術協力はあり得るが、その後どのように経済交流等に結び付けるのか(出口戦略)が課題である。
  • キャンディ市でのマスタープランの作成にJICAとして協力しており、歴史や現在の街並みの価値を踏まえつつ将来を考える地域おこしのイベントも開催する。また、同市の刑務所跡地の利用方法についても相談がある。

(4)スリランカ日本商工会

  • スリランカの可能性をもっと広めて多くの日本企業や自治体に来てほしいと考えている。
  • スリランカの国内市場は品ぞろえが限定的である(高級店やコンビニはなく、バラエティに欠ける)。また、所得はそれなりにあるが、それに見合った消費意欲があまりないように思える。
  • 2018年1月には日本商工会議所のミッション団がスリランカを訪れ、今後、シンガポールの日本商工会も来る予定である。「インドからスリランカを見る」だけでなく、「シンガポール・ASEANからスリランカを見る」という視点に期待したい。

(5)スリランカ州評議会・地方政府・スポーツ省

  • 州評議会・地方政府・スポーツ省では、地方政府の行政や財務状況などのモニターを行っている。
  • また、地方政府関係者の研修や財政支援(低金利ローン)も行っている。
  • スリランカ政府として、日本とのスポーツ分野での交流にも興味がある。
  • スリランカの自治体が海外とMOUを結ぶ場合(姉妹都市締結を含む)は、州評議会・地方政府・スポーツ省が署名の当事者となる。
  • スリランカでも高齢化が進んでおり、医療費の負担の在り方等を今後考えていかなければならない(現在、国民の医療費は無料である)。

(6)コロンボ大学経営財務学部

  • カルナラトネ教授が愛媛県のスリランカにおける技術支援事業を支援してきた。
  • 日本への元留学生協会には300人以上が登録しており、南アジアの留学生協会もある。
  • スリランカが日本に寄せる関心事として、ごみ問題や日本の自治行財政制度、物流も含めた農業、教育などがある。

(7)キャンディ市役所

  • 現市長の父が市長の際に、臼杵市との姉妹都市交流が始まった。
  • 2017年に姉妹都市提携50周年を迎え、学生交流等を行った。
  • スリランカと日本は友好的な交流が50年以上続いており、これからも交流を続けていきたい。
  • 日本から学ぶことは多いし、また、多くの支援を受けていることに感謝する。

3 今後の展望

2018年7月1日から、クレアシンガポール事務所の所管国にスリランカが追加されました。
これを契機に、スリランカの現状について、更なる調査及び分析をすることにより、日本の自治体にとって有益な情報の発信を行っていきます。
今後活発化が見込まれるスリランカにおける自治体間交流を、クレアとしても支援していきますので、お気軽にご相談ください!

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