8月1日(水)から8月3日(金)にかけて、シンガポール政府職員が、大都市における都市づくりについて学ぶため東京と横浜を訪問しました。この訪問はシンガポール国家開発省(Ministry of National Development)のCenter for Livable Cities(CLC:暮らしやすい都市センター)が主催する研修プログラムの一環として実施されたもので、23の政府関連機関から都市開発分野の業務を担当する37名の若手管理職候補が参加しました。
シンガポール事務所はCLCからの相談を受け、企画段階から訪問先の検討、アポイントの取り付け等の調整に関わりました。また、シンガポール政府機関との関係を深めるための絶好の機会となることから、シンガポール事務所職員が随行し、研修の様子を見学しました。
横浜市では、みなとみらい21地区の開発について講義を受けた後、地区を歩いて視察しました。シンガポールも企業誘致に積極的に取り組んでいることから、参加者は特に企業誘致戦略について関心が高く、多くの質問が出ていました。
丸の内エリアでは、PPP(Public Private Partnership)によるまちづくりや、無機質なオフィス街を夜間、休日も活気のあるまちに転換するための取組、また、エリアマネジメントの取組について説明を受け、実際にエリアを視察しました。ここでは、エリアマネジメントについての考え方に関心が集中し、短期的に利益が目に見えなくても、地域に貢献することは長期的に自らの利益につながるという考えに感銘を受けていました。
東京都では、都市づくりのグランドデザイン、民間活力を活かした再開発事業により魅力的な道路空間をつくった事例や、国家戦略特区の枠組みを活用して都市の魅力を高めて企業を誘致する取組、また東京のスマートエネルギー都市づくりについて説明を受けました。企業誘致について様々な視点からの実務的な質問があったほか、環境に対する意識啓発の難しさについて、東京都とシンガポール側で共感し合う場面もありました。
世田谷区は、率先してユニバーサルデザインのまちづくりに取り組み、都内で唯一国の「共生社会ホストタウン」に登録されています。ここでは、世田谷区の取組について説明を受けた後、ユニバーサルデザインに基づいて作庭された日本庭園「帰真園」を視察しました。帰真園では、誰でも庭園を楽しめるような設備を整えるだけではなく、利用者の声を聞きながら柔軟に管理することが必要との話に、大いに感心している様子でした。
品川駅北地区では、約40年ぶりとなる山手線新駅の建設が進んでいます。まちと駅を一体的に開発する大規模プロジェクトについて説明を受け、まちづくりに関わる政府職員らしい専門的な質問が多く出ました。
東京都港湾局では、お台場における都市開発について説明を聞いた後、周辺を歩いて視察しました。訪問前日には、お台場海浜公園が2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるトライアスロン会場となることが発表されたばかりであり、2020年以降の土地や施設の利用について質問が集中しました。
日頃から、シンガポール政府は、自国を取り巻く環境の変化に応じて方針や政策を迅速かつ柔軟に変化させていると感じます。今回の視察研修に同行し、各訪問先で多様な視点から多くの質問が出ること、またその質問が実務的であることに驚かされました。その質問内容からは、他国の状況から学び、自国の政策に活かせる部分はないか常に考えていることが良く理解できました。このことが、シンガポール政府の意思決定が迅速である一つの要因であると思われます。
今回はCLCをはじめとするシンガポール政府機関との関係をさらに深めることもできました。この関係を維持して今後の情報収集や地方自治体支援活動に活かしていきます。