2018年10月25日から10月27日までにかけて、マレーシア・クアラルンプールの伊勢丹LOT10店でクレアが開催した「日本ふるさと名産食品展」に合わせ、日本の食品の販路開拓の取組などについて調査を行うとともに、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター(JFKL)、在マレーシア日本国大使館、JETROクアラルンプール事務所等を訪問してマレーシアの現状について意見交換をしましたのでその概要をご報告します。
1 高齢者に人気、暮らしやすいマレーシア
マレーシアは一般財団法人ロングステイ財団の『ロングステイ希望国・地域』の調査において「日本人が住みたい国No.1」に選ばれています。大きな要因は、長期滞在プログラム「マレーシア・マイ・セカンドホームプログラム(MM2H)」により政府が海外からの移住を推進していることによると思われますが、物価の安さも要因の一つと考えらます。コンドミニアムは100㎡以上の広さがあり、月1,500リンギット(約40,800円)で借りることができる所もあり、隣国のシンガポールに比べると格安です。また、一般的に月30万円あれば十分に暮らせると言われており、日本の往復航空券も2,000リンギット(約54,000円)以下で購入できます。さらに、子供を連れて家族でショッピングモールで1日過ごしても100リンギット(約2,700円)程度しか使わないと言われています。日本からの移住は最近減少傾向ですが、前述の調査によると2016年も300件近いMM2Hの承認がありました。昨今、日本国内でも大都市圏から地方への移住促進政策が盛んに取り上げられております。国策としてのマレーシアの制度と日本の地方自治体の政策では規模が違いますが、「住みたい」と思わせる仕組みや生活スタイルには何かヒントがあるかもしれません。
2 日本語学習者をサポートしながら国際人材を育成する日本語パートナーズ
マレーシアは多民族国家であり、いろいろな言語が話されている中で日本語は第3外国語として学ぶことができます。中等教育として、約120~130の高校で日本語の授業が行われているほか、マラヤ大学には予備教育部日本留学特別コースがあり、国際交流基金は同コースに対して1982年から日本語の専門家を派遣しています。同コースは東方政策に基づき開始されたものですが、同政策を提唱したマハティール首相の再就任により日本との関係がさらに強まることが予想され、引き続き一定数の日本語学習者が期待されます。一方、日本語を指導する専門家等は不足しており、国際交流基金アジアセンターでは、アジアの中学・高校で日本語教師や生徒のパートナーとして、授業のアシスタントや日本文化の紹介を行う「日本語パートナーズ」を派遣しています。また、埼玉県や静岡県等では、「国際交流事業の相互連携に関する協定」を締結して「“日本語パートナーズ”県推薦プログラム」を実施しています。日本語パートナーズとして県内在住者を派遣することにより、グローバル人材の育成と、アジアとの懸け橋としての活躍を期待しています。
3 テストマーケティングとしての食品展視察
今回、現地の方々の率直なご意見をいただくため、マレーシア元留日学生協会(JAGAM)と東方政策元留学生同窓会(ALEPS)の会員の方々にも食品展を視察していただきました。商品に対する現地の方の感想を日本語で聞くことができることから、出展者は会員が訪問すると食品の成分や製造工程を詳しく説明したうえで試食をしていただき、会員から商品やパッケージに対するアドバイスを受けていました。食品展が出展者にとって、マレーシアへの販路開拓のテストマーケティングの機会として有効であることを改めて感じた場面でした。また、元留学生に協力をしていただき現地の「生の声」を聞くことで事業実施の効果が高められることから、元留学生など日本に理解が深い方々との「つながり」を大切にしていくことが重要であることを再認識しました。
海外に進出するには現地の情報をできるだけ多く、正確に掴むことが肝要です。それには現地に行くことが一番ですが、自治体によっては費用や日程の都合により難しいこともあります。クレアでは、訪問によって現地で見て聞いて得た情報を皆様に情報発信していきます。