自治体国際化協会は、全国市町村国際文化研修所(JIAM)、地域国際化協会連絡協議会と共催し、2019年 1 月 9 日(水)から 1 月 19 日(土)まで、「地域間交流促進プログラム」を実施しました。 このプログラムは、地域の国際化を担う日本の地方自治体等職員の国際感覚の向上を目的とし、シンガポール事務所の所管する国に赴き、政府機関、企業等の訪問や現地の人々との交流等を通じて、その国の現状と課題に対する理解を深めると共に、今後の地域間交流促進の契機とするものです。2018年度は10名の自治体等職員が、日本において、世界第2位の人口を抱え経済発展が続くインドの基礎的情報や政治、文化について3日間の研修を受けた後、政治の中心であるデリー、金融や商業が栄えるムンバイの2都市を中心とした地域を訪問しました。
デリーでは、在インド日本国大使館、日系機関、オールインディア自治体協会を訪問しました。日本政府観光局(JNTO)デリー事務所では、訪日観光の現状やインド人観光客の傾向についてブリーフィングを受け、意見交換を行いました。
2015年に約2,000万人であったインド人海外旅行者は、2020年には2.5倍の5,000万人に増えると予想されています。今後ますます増加するインド人観光客を取り込むヒントとして、①日本に住む在留インド人の家族や知人が影響力の大きい情報発信源になる、②4~5月のスクールホリデーを利用して旅行する人が多い、③インドで海外ウエディング市場が拡大している、という情報を得ました。一方で、インド人にはベジタリアンが多いため、メニューにベジタリアン表示をするなどの対応が求められるという課題もあります。
インドの経済と日系企業の進出状況を学ぶため、日本貿易振興機構(JETRO)ニューデリー事務所を訪問しました。インドでは中間所得者層の増加を背景に個人消費が伸び、買い物場所や嗜好の多様化が進んでいるということでした。インターネットや携帯電話による消費や決済も普及し始めており、13億人の市場は今後大きな発展の可能性を持っています。進出している日系企業は自動車などの製造業の割合が多く、進出を後押しするため日本企業専用の工業団地が整備されています。
訪問団は、現地で自動二輪車を製造するホンダモーターサイクル&スクーター社のタプカラ工場を視察しました。インドにおける二輪車の年間生産台数は1,800万台以上と世界の3分の1を占める市場となっています。同社は、インド人が好む頑丈な鋼板のボディを使用しながらも価格を抑えた製品を開発し、消費者のニーズを的確に捉えて国内のシェアを伸ばしています。視察した工場はインド人スタッフによってマネジメントがなされており、スタッフのアイデアを積極的に業務に取り入れるなど、消費者だけでなく現地従業員からも受け入れられるマネジメントについて学びました。
インドには24,000人の日本語学習者がいるとされ、2017年に行われた日印首脳会談では今後5年間のうちに100の高等教育機関において日本語講座を設立し、1,000人の日本語教師を育成する取組が合意されています。今回のプログラムでは、国際交流基金(JF)ニューデリー日本文化センターにおいて、インドの初中等学校で日本語を教えるインド日本語教師会のインド人教師と、インドと日本の社会や制度について意見交換を行いました。「教育制度」「国際交流プログラム」「自国から見た相手国」という3つのテーマについて、インドと日本それぞれが発表し、その後グループに分かれて意見交換を行いました。テーマの他にも、互いの国について興味があることについてグループ内では活発な議論がされ、現地の方と交流のできる大変貴重な機会となりました。
研修の後半は、西海岸に位置する大都市ムンバイに移動し、在ムンバイ日本国総領事館、マハラシュトラ州観光開発公社、ムンバイ首都圏開発庁等を訪問しました。また、ムンバイ市と50年以上に渡り姉妹都市提携を結ぶ横浜市及びマハラシュトラ州と観光交流の分野でMOUを結ぶ和歌山県の両自治体はムンバイ市内に事務所があり、両事務所より友好都市提携までの歩みや、友好関係を効果的に続けていく取組についてブリーフィングをいただきました。日本とインド自治体間で共通して取り組める分野について地道な交流活動を続けることにより友好関係を継続しており、その他にも現地で地域間交流を支える職員ならではの情報を得ることができました。
インドの地方自治体であるムンバイ市役所を訪問しました。日本と同様、多岐にわたる業務を執り行っていますが、今回は防災と廃棄物処理の担当者よりムンバイ市の現状と課題について話を伺いました。七つの島を埋め立ててできたムンバイ市は、大雨による洪水や高潮の危険性があり、また地震発生の可能性もあります。狭い土地に人口が密集してることに加え、高層ビルやスラム街も多いため、災害が起きた際の住民への対応が課題となっているとのことでした。日本側の参加者からも、所属する自治体の課題や取組について発表し、両国の地方自治体が課題を共有する場となりました。
クレアシンガポール事務所では、このような自治体職員等向けの研修プログラムを通じて、所管国への理解を深め、各国とのネットワークを構築するための支援をしてまいります。今回のプログラムの報告書はクレアシンガポール事務所のホームページにて近日中に公開する予定です。ぜひご覧ください。https://www.clair.org.sg/j/exchange/