2018年1月7日(月)から11日(金)まで、シンガポールで札幌市教育委員会が指導主事の調査派遣研修を実施しました。研修テーマは「キャリア教育」「心のケア」「学力向上の取組」の3つで、シンガポール教育省や現地の中学校等を訪問し、意見交換や視察を行いました。
シンガポール事務所では、訪問先へのアポイントメント取得支援及び同行支援を行いましたので、その一部を報告します。
国土が小さく資源に乏しいシンガポールは、国民を唯一の「天然資源」と捉え、教育を大変重要視しています。このことは国の予算にも表れており、2018年度予算に占める教育費の割合は16.0%で、防衛費(18.4%)・交通費(17.1%)に次いで3番目に大きいものとなっています。
シンガポールは、教育目標の一つに「シンガポール経済を支える人材の育成」を掲げ、小学校低学年からキャリア教育を行っています。その手法の一つとして、「Skills Future Student Portal」というインターネットサイトを開設し、子どもたちがゲーム感覚で将来の職業とそこに至るプロセス(進路)をイメージできるようにしています。
また、キャリア教育専門のカウンセラーが配置され、学校とチームを組みながらキャリア教育を行っています。
シンガポールでも悩みやストレスを抱える子どもたちがいます。このような子どもたちに対し、学校教育では「諦めず、粘り強くものごとに取り組む力(レジリエンス)」を育むことを大切にしています。
これは、子どもたち自身が「強い精神力」「問題解決能力」「周囲の環境把握能力」を身に付け、将来どのような困難に直面しても前向きに対応できるようになってほしいというものです。
小中学校の入学前・入学後の各段階で、学力の面で支援を必要とする子どもを把握し、支援する取組が行われています。
例えば、小学校低学年の子どもの場合、教育省から新たに支援員が派遣され、放課後学習が行われています。また、中学校では学習到達度に合わせたクラス分け・カリキュラム編成が行われています。
※シンガポールの中学校は日本の中等教育(中学校~高校)に相当
シンガポール教育省の部分でも触れたとおり、シンガポールでは学校教育とキャリア教育が大変強く結び付いており、このことが学校の取組にも表れています。
例えば、生徒から将来の希望職業について聞き取りを行い、その職業に必要な科目の履修指導が行われます。また、将来求められる職業についての情報提供のほか、卒業生や近隣の学校等と連携した職業体験や体験入学等を行い、生徒の選択肢を広げるようにしています。
シンガポールでは、生徒や友人といった同じような立場にある仲間同士が悩みを相談しやすいとの観点から、「ピアサポート」の取組が進められています。この取組は2017年に始まったもので、今回訪問した中学校がその先駆者とのことでした。
各学級では2人の生徒がピアサポートリーダーとなり、生徒の世話役として、悩み相談や生徒の絆を強めるためのイベントの企画・運営といった活動を行っています。
また、ピアサポートリーダーの情報交換・連携のため、学内ではリーダー会議、学校間ではピアサポート会議が開催されています。
今後は、ピアサポートに携わる教員・生徒の更なるスキルアップ等を行っていきたいとのことでした。
研修に参加された皆さまは、今回の海外研修を通じて、実際の教育現場の様子を自分たち自身で見聞きすることができ、多くの刺激を受けたようです。
当事務所では、訪問先のアドバイスやアポイントメントの取得といったサポートを行っていますので、お気軽にご相談ください。