2019年2月11日(月)から 2月14 日(木)までの4日間、茨城県土木部常陸大宮土木事務所の職員が、海外個人研修の一環でシンガポールのMICE誘致の取組について視察するため、来星しました。当事務所では、シンガポールのIR政策及び観光政策のブリーフィングと、訪問先への同行支援を行いましたので、その内容を報告します。
2010年の開業以来、シンガポールのランドマークとして多くの旅行者を魅了している、代表的なMICE施設です。
今回の訪問では、様々な用途で使い分けが可能な2,000の展示場や会議室、カジノをはじめ、付属する商業施設を視察しました。マリーナベイサンズの担当者によると、客層の多くがビジネス客やMICE出席者であり、カジノのスペースは全体の約3%にも拘わらず、その年間売上はマリーナベイサンズの総売上の約7~8割を占めており、その導入効果の大きさを伺い知りました。
同じく2010年に開業したMICE施設で、リゾート島にあることから、レジャースポットとして知られています。カジノをはじめ、ユニバーサルスタジオや水族館などの付属するレジャー施設及びホテルを視察しました。
ここは、ファミリー層やレジャー客をターゲットにしていることから、定期的なレジャー施設のアトラクションの入替えなどでリピーター客の取り込みを目指すなど、マリーナベイサンズと差別化を図っていることが特徴として挙げられます。また、会議場にはハラール専用のキッチンが併設されていることも、ムスリム対応の案件誘致には、大きな要素になっていると聞きました。
JNTOでは、シンガポールのMICE誘致の現状及びシンガポールから見た日本におけるMICE誘致のヒントについて、ブリーフィングを受けました。
コンベンション誘致に当たっては、ターゲットとする地域がアジアなのか、欧米なのかを明確にすること、そして、MICE誘致に向けては、半年から数年の時間を要することから、専属の担当者を置くなど、時間をかけて丁寧に取り組んでいく必要があるという話がありました。シンガポールは、官民連携でそれぞれの専属の担当者が長期的な誘致活動をしており、担当者が2、3年で代わる日本の自治体とは大きく異なる点でもあります。
一方で、日本のおもてなしや食には海外の旅行者を惹き付ける魅力があり、他国に勝る優位な要素であるという助言もありました。
シンガポール陸上交通庁が所管する、交通政策について学べる一般公開の施設です。シンガポールは急激な都市化の中、狭い国土の有効活用を目指して、都市政策と連動して、政府主導で交通政策にも取り組んでいます。渋滞を緩和するため、商業地区で交通量の多い時間帯に賦課金を徴収するシステムの導入や、車両数の制限、安価な公共交通など、一体の交通政策も、MICEの発展に大きく寄与していることを感じました。
シンガポールがMICE開催地として、世界から高い評価を得ている理由を考えると、その背景には、国際競争力を高めるために、政府が主導して海外からの民間投資を行ってきた経済成長の戦略があります。話題性の高い大規模なMICE施設の開発だけでなく、空港からの交通の利便性や、ホテル、飲食、充実したエンターテインメントなどのハード面、また、数千人、数万人規模の国際会議や宴会を行えるオペレーション能力の高さなどソフト面の対策が、MICE開催地としての機能と魅力を高めている要素だといえます。
日本においても、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(通称、IR推進法)が成立し、統合型リゾート開発の議論が本格化してきました。カジノにおいては、ギャンブル依存症対策など様々な課題がありますが、経済成長の活路を見出して、地方自治体においても、MICE誘致の取組が益々加速することが予想されます。茨城県においても、昨年、官民が連携したMICE誘致推進協議会が設立されたそうで、今後の茨城県のMICE誘致の戦略が注目されます。