2019(令和元)年8月28日(水)から9月6日(金)(国内研修3日間含む)にかけて、シンガポール・マレーシアにおいて、「自治体の海外戦略~活力あるアジアとの交流~」と題して、全国市町村国際文化研修所(JIAM)との共催により、視察研修を実施しました。市町村等から15名の職員の参加があり、URA(シンガポール都市再開発庁)、Our Tampines Hub(シンガポールのコミュニティセンター)、マレーシア・プタリンジャヤ市役所といった現地機関と在星日本大使館、JETROクアラルンプール事務所等の日系機関を訪問しました。
海外研修に先立ち、日本国内で3日間に及ぶ事前研修を実施し、訪問国についての知識を深めました。シンガポール・マレーシアでは、都市計画分野から観光分野まで、13にのぼる視察先を訪れました。ここでは、特に研修生の関心が高かったURA、マレーシア・プタリンジャヤ市役所、MATTA Fair(旅行博)についてご紹介します。
URAでは、都市計画へのデジタルツールの活用等を図る部署であるデジタルプランニングラボを訪問しました。ブリーフィングでは、主にGISなどのデジタルツールや公共交通等から得られるデータをどのように活用しているのかといった説明をいただきました。ここで使われているツールは主に3つで、人口データなどを地図上に可視化・分析する「ePlanner」、都市計画情報を省庁間で共有する「GEMMA」、インフラ等の開発計画と進捗を確認できる「Urban Systems Dashboard」というものでした。これらのツールを組み合わせることで、最新の道路整備状況や今後の計画を確認しつつ都市計画ができるので、実態に即した効率的な街づくりが可能になっていると感じました。また、通勤時間を45分以内にするためのオフィスエリア分散化を計画するなど、かなり具体的な指標を持って分析及び都市計画をしていることに参加者からも驚きの声がありました。
データ活用以外にも、パネル展示や都市計画に対するアンケート実施など、地道な住民理解への取組みや都市計画への住民意見反映は学ぶべきところがあるとの感想もありました。
今回訪問したプタリンジャヤ市は、マレーシアの首都クアラルンプールの衛星都市であり、60万人超の人口を抱えています。ブリーフィングでは、同市が行っているSDGsやスマートシティの取り組みについて話を伺いました。スマートシティについては、市内各所に設置してある高精度監視カメラのコントロールセンターを実際に見学させていただき、その映像を解析して交通施策の立案につなげるといった活用方法も考えているとのことでした。
マレーシアのクアラルンプールで開催されるMATTA Fairは、マレーシア最大級の旅行博で、例年10万人を超える来場があります。この旅行博では、JNTOクアラルンプール事務所が設置したJapan Pavilionに、インバウンドPRを目的とした多くの自治体が出展をしています。研修参加者は、日本の自治体がマレーシアでどのようにPRをしているのか、来場者の反応はどうか、旅行博に出展している他の国々がどのような売り出し方をしているのか、といったことを視察しました。
事前にJNTOクアラルンプール事務所を訪問し、ブリーフィングを受けていたため、マレーシアの旅行者の好みや傾向といったブリーフィング内容を実際に確認できる機会となりました。また、日本の旅行会社だけでなく、他国の旅行会社でも日本旅行の販売をしているところが多くあり、研修参加者からは「インバウンド事業を行うにあたって、どういった旅行会社にアプローチをするのがいいのか現場を見て感じることができた」という感想もありました。
参加者からは、業務に活かせる知識を深めることができた、東南アジアのマーケットに対する理解を深めることができたといった声も聞かれました。その他にも、研修を通じて企業や現地政府機関等との人脈を築くことができたと感じています。ぜひ、この研修で得た経験や人脈を今後の政策立案等に活かしていただければと思います。