茨城県では例年職員の海外研修を実施しており、本年度はシンガポールとニュージーランドを訪問し、スポーツツーリズムや女性の社会進出等多岐にわたる施策を学びました。クレアではそのうち、2020年1月9日にシンガポールの政府機関であるスキルズフューチャーを訪問した際に同行支援を行いました。
スキルズフューチャーは2016年にシンガポール教育省の傘下にできた機関で、少子化と高齢化等に伴う労働力不足を解消するため、①個人のキャリア形成に関する情報提供、②学歴だけでなく人柄も見るようにという企業への啓蒙、③価値のある訓練の提供、④生涯学習の重要性の周知、の4つを柱に事業を実施しています。
特に知られている事業が「スキルズフューチャー・クレジット」で、職業訓練等のコースを受講する際、有効期限がない500シンガポールドル(約4万円)分のクレジットが支給されます。受講するコース費用自体にもスキルズフューチャーが50~90%の助成を行っているため、受講者は最大で5,000シンガポールドルの価値があるコースを無料で受講することができます。
各コースを新設する際には、講師がコース内容のプロフェッショナルであるか、産業に関連した内容になっているかといった基準が設けられ、コースが開設された後も随時監査を実施することで質を担保しています。
この3年間で43.1万人(全シンガポール人の約12%)がクレジットの支給を受けており、性別・年齢を問わず満遍なく活用されているそうです。特に利用されているのはIT・デジタル関係のコースとのことでした。
また、スキルズフレームワークとして全産業の80%の職業やキャリアに関し、どのようなキャリアを形成できるか、就業するにはどのようなスキルが必要か、どのようなトレーニングプログラムを受けられるか等を紹介しています。企業と連携することで、内容の質を担保しているそうです。
~支援後の所感~
まずスキルズフューチャーというキャッチコピーをそのまま組織名とするシンガポールの柔軟性に驚きました。
組織の全体予算が7億2000万シンガポールドル(約578億円)とかなり大きく、近年国民の不満もあり海外からの労働者を制限しているシンガポールにおいて、労働者一人ひとりの質の向上が喫緊の課題であると政府は考えていることを示しているかも知れません。
(今井所長補佐 北海道池田町派遣)