近年、世界的な航空旅客数の増加に伴い、特にアジア地域における航空機需要が急速に拡大しており、欧米系航空機部品メーカーによるアジアでの現地生産が進んでいます。
今回初めて開催された、関西航空機産業プラットフォームNEXT主催の本ミッションでは、兵庫県下の航空機産業等に携わる企業を中心とした7社が参加し、シンガポールエアショーでの商談、シンガポール・マレーシアの現地企業・政府機関を訪問し、意見交換を行いました。シンガポール事務所では、今後の自治体による企業支援の参考にするため、本ミッションに同行いたしました。
1 関西航空機産業プラットフォームNEXTとは
関西航空機産業プラットフォームNEXTは、近畿経済産業局・(公社)関西経済連合会・(公財)新産業創造研究機構が、将来性のある航空機産業を関西経済の柱の一つとすべく、2019年度にスタートしたプロジェクトです。他地域・他産業との連携も含めた産学官連携によって、専門家派遣、マッチング、人材育成、規制緩和・認証取得支援による環境整備などを行っており、世界に通用する航空機産業の拠点を関西に形成することを目指しています。
2 ぐんぐん伸びる!シンガポール航空宇宙産業
シンガポール航空宇宙工業会(AAIS)では、シンガポール経済開発庁(EDB)からブリーフィングを受け、セレターエアロスペースパークの見学ツアーに参加しました。
シンガポールの航空宇宙業界は過去10年間で、毎年10%ずつ成長しており、アジアで最大かつ最も多様な航空宇宙関連企業を擁しています。世界のMRO(航空機の整備・修理・点検)作業量の10%を担っており、世界中から多くの機体がシンガポールに集約されています。また、世界最大のパイロットの訓練施設も設置されています。
セレターエアロスペースパークはEDBら政府機関によって開発された工業団地で、地域に溶け込んだ環境づくりに力を入れています。地域住民のためのアミューズメント施設を併設したり、大学と連携し二年に一度1000人の学生を招待するオープンイベントを開催し、航空宇宙業界を学生のキャリアの選択肢に入れてもらうなど、入居企業だけでなく全ての人にとって身近な存在であろうと努力しています。
3 行政と企業が一丸となって取り組むマレーシア
マレーシアでは、航空機産業部品を取り扱う企業と、マレーシア投資開発庁(MIDA)を訪問しました。
MIDAは、経済のプロモーション・計画・評価を行う省庁で、国際貿易産業省(MITI)という日本の経済産業省と類似した役割を果たす省庁の傘下にあります。世界に20か所、日本では東京・大阪に事務所を持ち、これまでにいくつもの日本企業のマレーシア進出をサポートしてきました。また、マレーシア国内ではほとんどの州に事務所を持っており、州と連携し、それぞれの自治体に適した企業の誘致を行っています。
MIDAでは進出企業のために様々なインセンティブを用意しています。100%外資企業でも進出できるようになり、労働ビザも緩和されました。人材育成においても、50以上の大学等で航空機産業に従事できる学生を養成するなど、国を挙げて航空機産業に力を入れています。
4 今後の展望
シンガポールのセレターエアロスペースパークでは「企業と地域コミュニティの共存こそが真のパートナーシップ」と考え、空港周辺の企業と地域が良好な関係を築き上げられるよう努力しており、また、シンガポール・マレーシアともに行政が積極的に企業の進出をサポートしていることが印象的でした。
これを受けて、本ミッションの参加企業からは、「シンガポール・マレーシアでの、国と企業が一体となって航空機産業を盛り上げていこうとする勢いに刺激を受けた」「日本でも自治体の垣根を越えて取り組んでほしい」という声があがりました。
今後は、航空機産業展などで、自治体が集合した「JAPANブース」としての出展の可能性もあるそうです。
また、本格的に海外展開を見据えた参加企業もあり、シンガポールエアショーにおいてフランス企業との業務提携を行った様子がメディアから取材を受けたり、MIDAにおいて具体的にマレーシア進出について意見交換を行うなど、非常に実りあるミッションとなりました。
2020年10月にはエンジンフォーラム開催も控える神戸をはじめとして、これからの日本での航空機産業の隆盛が非常に楽しみです。