2021年7月30日(金)及び8月2日(月)から4日(水)までの4日間、初のオンライン開催となったEROPA会議に参加しましたので、その様子をご報告します。
1 EROPAの組織
EROPA(Eastern Regional Organization for Public Administration)とは、アジア・太平洋地域の経済及び社会の発展に資するため、各国の行政の質の向上を図ることを目的として、1960年12月に設立された国際組織です。EROPAには3つの会員構成(国家会員・団体会員・個人会員)があり、クレアは団体会員代表として参加しました。また、国家会員(全10団体)として、日本からは自治大学校が参加しました。2020年にタイのバンコクで予定されていた会議はCOVID-19の影響で延期となったため、2年ぶりの開催となった今回の会議では、第66回執行理事会に加えて、「コロナ渦における包括的成長のための行政:責任・義務・デジタル変革」というメインテーマに基づいた分科会のほか、2年に1回開催される総会及び団体会員代表選挙も実施されました。
2 オンライン開催による従来との違い
長い歴史のあるEROPA会議ですが、今回は初めてのオンライン開催となり、従来の会議の進め方とは異なる点が多かったものの、工夫されている点も多く非常に参考となりました。
まず、団体会員代表選挙の手法について、従来は会期中に代表選挙を実施しており、その場でクレアの活動概要などをスピーチしておりましたが、今回は立候補者がGoogle Formに活動概要や立候補理由を記載して事前に申請する形式となり、会期前に投票が実施されました。他にも、正副議長の選挙も同様の事前投票形式で実施されており、オンライン化により事前対応できるものを選別して進行の合理化を図るなど、随所に工夫が見られました。
なお、団体会員代表については、会員代表の定数が3枠のところ、クレアも含めて3団体の立候補であったため、クレアは引き続き団体会員代表として選出されており、クレアの他には、香港公共行政学会、バングラデシュ行政研修所が代表に選ばれています。
また、会議におけるオンラインツールについても、出席者同士での意見交換などが行われる執行理事会及び総会についてはZoomにより開催され、各国の研究発表が行われる分科会についてはFacebook Liveで配信されるなど、会議目的に応じて計画的に使い分けられていました。特に分科会の配信内容については、EROPAの公式Facebookでも繰り返して視聴することができ、再生も含めて約6,000回も視聴されており、オンライン開催の強みを活かした情報発信だと実感しました。
(参考 EROPAの公式Facebook https://www.facebook.com/EROPA1960/)
3 会議状況
30日には第66回執行理事会が開催されました。フィリピン人事委員会の会長が議長を務め、開発経営センター(大韓民国)、人材育成研究センター(中国)、地方行政センター(日本)における活動内容や、公共行政に関する討論会の様子をEROPAのホームページ上でYouTubeにより公開している「#TAG Dialogue」の状況などが報告されました。他にも、2010年よりEROPAの事務局長を務められたOrlando S. Mercado先生に替わり、次期事務局長をAlex B. Brillantes, Jr先生とする提案や、次回開催国のネパール総務省からのプレゼンテーションも行われ、オフラインと変わらない活発な意見交換などが行われました。
また、2日から3日にかけて実施された分科会では、「包括的成長のための行政責任の推進」、「包括的政策立案のための利害関係者の義務」、「デジタル変革による包括的サービス提供の実現」、「労働者の義務の遵守による公共部門の向上」というサブテーマに分かれて、合計で30ものプレゼンテーションが実施されました。日本の大学からも多くの先生が発表され、「日本の地方行政の危機管理」をテーマとした高野恵介先生(筑波大学)及び森川想先生(東京大学)による発表や、「日本の地方におけるテレワーク推進政策」をテーマとした藤原直樹先生(追手門学院大学)による発表など、地方自治体にとっても、身近に感じる内容が数多く発表されました。
最終日の4日には総会が開催され、新事務局長となるAlex B. Brillantes, Jr先生による講演も行われ、会議全体を通してオンラインでも非常に円滑に会議が進行されました。
4 所感
今回国際会議に出席し、各国政府の取組みや大学教授の研究発表を通し多様なテーマに触れることで、様々な立場で行政の発展に尽力している方々から刺激を受けました。また、執行理事会などへの出席を通して、多岐にわたる組織との連携を強化し、クレアのプレゼンスを高める貴重な機会となりました。
また、オンラインを活用した国際会議の進め方の面では、事前に対応できる事項の整理や、適切なオンラインツールを選択することの重要さを実感するなど、良い収穫がありました。その他、会議の時間設定について、執行理事会及び分科会はタイ時間での設定である一方で、最終日の総会のみはフィリピン時間での設定となるなど、オンラインでの国際会議における調整事項の多さにも触れる機会を得るなど、大変勉強になりました。
団体会員代表は執行理事会への参加権を持つので、来年度も執行理事会に参加し日本のプレゼンスを高めるとともに、日本の自治体の行政サービス向上のための情報収集・情報共有に努めてまいります。
なお、2022年度のEROPA会議は、「Governance and Public Administration in COVID-19 Pandemic; Learning, Innovations, and Reforms in Managing Global Changes」をメインテーマに、ネパールで開催されます。