クレアシンガポール事務所は2021年11月17日からの3日間、タイ内務省地方自治振興局(DLA)と日本国総務省(MIC)との共催で、タイの地方自治体職員80人を対象に「DLA-CLAIR-MIC地方行政ジョイントオンラインセミナー」を開催しました。2018年に、タイで現地開催をして以来3年ぶりの開催となった今回は、新型コロナウイルスの感染拡大により現地開催が困難な状況であったことから、オンラインでの開催となりました。
今回のセミナーでは、タイの地方自治体が直面している政策課題である「スマートシティ」、「COVID-19流行中の災害への備え」及び「高齢化社会のためのイノベーション」の3テーマについて、日本側とタイ側からそれぞれ先進事例の発表を行うこととしました。日本側からは、総務省の協力の下、それぞれのテーマについて先進的な取組を行っている福島県会津若松市、熊本県及び兵庫県加古川市から講師をお招きし、各団体の取組をご紹介いただきました。
セミナーの初日、11月17日には「スマートシティ」をテーマに、福島県会津若松市が取り組んでいる「スマートシティ会津若松」の取組について、その概要のほか、地域交通や農業等、様々な分野で実践されているスマートシティの具体事例、また、実装されている都市OS等についてご紹介いただきました。受講者からは、「予算のない中でどのようにスマートシティに向けて取り組んでいけば良いか」といった自治体の実情に照らした質問もあり、このテーマに対するタイ側の関心の高さがうかがえました。
2日目の11月18日は「COVID-19流行中の災害への備え」をテーマに、実際にコロナ禍において災害を経験された熊本県からご講演をいただきました。講演の中では、日本の災害対策法制等のほか、令和2年7月豪雨時に実際に行われた新型コロナウイルス感染症対策を講じた災害対応等についてご紹介いただき、当時の被害の状況や避難所運営の様子がスライドで紹介された際には、受講者が画面に食い入るようにスライドを見ている様子も見受けられました。
最終日となった11月19日は兵庫県加古川市から「高齢化社会のためのイノベーション」をテーマにご講演をいただき、同市内に設置している見守りカメラのほか、ビーコンタグ(BLEタグ)を所持する高齢者の位置情報を、家族がスマートフォンアプリやパソコンで把握できる見守りサービス等についてご紹介いただきました。受講者からは「タイからの視察を受け入れてもらうことは可能か」といった質問が寄せられる等、同市のサービスに対しての強い関心がうかがえました。
このように、3日間を通して、講演を行った講師陣には多くの質問が寄せられ、講師の知識と経験を受講者に共有いただきました。また、各日、日本側講師の講演後に行われたタイ側の講演でも、講師となった現役の市長や元県知事といった方々から各自治体における先進的な事例の紹介が行われる等、受講者にとって両国の先進事例を学ぶ良い機会となったと思います。
今回のセミナーは、渡航が困難な状況の中でオンラインでの実施となりましたが、上述のように視察に関する質問も寄せられるなど、オンラインではありながら、今後の日本とタイの交流促進にも期待が持てる内容となったのではないかと感じています。今後もシンガポール事務所では、今回のカウンターパートとなったDLA等との連携を深めながら、日本とタイ双方の課題解決や地方自治体間の交流につながる事業を行ってまいります。