三重県観光連盟がシンガポール通商産業省で誘客戦略を学ぶ!

2019年9月30日(月)から10月1日(火)にかけて三重県観光連盟職員が来星し、シンガポールにおけるF1開催を契機とした観光誘客戦略に関する調査を行いました。クレアシンガポール事務所では、観光に関する情報提供を行うとともに、シンガポール通商産業省(Ministry of Trade and Industry:以下MTI)への訪問に同行しました。

 

1 三重県の現状

 三重県鈴鹿市では2021年までF1日本グランプリが開催されることが決定しています。この国際的かつ日本唯一のイベントであるF1は貴重な観光資源であり、2018年はレース開催日の3日間で165,000人の来場者を記録しました。そのうち9,500人がアジアやヨーロッパなど海外からの来場者であり、今後より海外からの誘客を加速させていきたいという考えから、シンガポールにおけるF1開催の監督官庁であるMTIを訪問しました。

 

2 シンガポールにおけるF1開催の現状

 2008年から毎年F1を開催しているシンガポールでは、2018年までの11回で49万人もの外国人が来場し、テレビやインターネットでの視聴者数は8億4千万人にものぼりました。

 シンガポールのF1開催において特徴的なのが、高級ホテルやオフィスビルが立ち並ぶ市街地で行われるナイトレースであることです。そのため、レース開催によりメリットがある近隣のホテルからセスと呼ばれる税金を徴収し、開催運営の資金に充てています。セスの割合はサーキットに隣接しているホテルは宿泊料の30%、隣接していないホテルは20%で、対象となるホテルはMTIが決定しています。セスについてはホテル側からサーキットからの距離による傾斜配分など見直しを要望されており、今後ホテルの稼働率などを見ながら改善を検討しているとのことでした。

 その他F1による観光収入を増やすための方策として、国際会議などのビジネスイベントをF1開催週に重ねたり、レース2週間前から様々なイベントやプロモーションを行ったりすることで滞在日数の延長を延ばす工夫をしていることや、「富裕層のスポーツ」というイメージを持たれがちなF1を科学技術教育の題材として活用し、学校でのイベントを行っていることなど、F1というコンテンツを最大限活用していることが伺えました。

 

3 シンガポールにおける観光プロモーション戦略

 観光を所管しているMTIでは、傘下であるシンガポール政府観光局(Singapore Tourism Board:以下STB)と連携しながら観光に関する各種プロモーション活動などを行っています。より多くの国からたくさんの誘客を目指したいというMTIの方針に沿って、STBが各国向けの具体的な戦略を立てており、例えば日本向けには5月に公開された人気アニメ「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」の舞台としてシンガポールが日本国外として初めて選ばれた際、舞台となる場所の候補を紹介するなどの協力を行いました。

 最近の課題として、より旅行に対し目の肥えた来訪者に対する魅力的な観光地の開発やPR、中国、マレーシア、韓国などとの地域的な競争、観光産業の持続的な成長や狭い国土の中での住民生活への影響などが挙げられました。特に観光産業の持続的な成長という点で、高齢化が進んでいるシンガポールにおいてホテル等の宿泊施設の従業員の人材育成が課題となっており、こうした課題解決のためのテクノロジー活用に対して助成金の制度を設けるなど、国としての対策を講じているという点が印象的でした。

 

 クレアシンガポール事務所では、今後も現地の生の情報をお伝えするなど、自治体への支援を通した情報提供を積極的に行ってまいります。

印刷用のPDFファイルはこちら